睡眠に社会が注目! スリープテックで気軽に取り組むウェルビーイング

ぐっすりと眠り、良い睡眠がとれた朝の目覚めは気持ちのいいものです。しかし、日本は世界一睡眠不足の国であることをご存じでしょうか? 睡眠不足は生活の質に大きな影響を与えます。
今回は、睡眠の質を改善するためのIT技術や、AIを使った「スリープテック」に注目しました。睡眠不足の改善に必要な、ウェルビーイングに貢献する最新技術をご紹介します。

世界一睡眠不足の国!? 日本人にスリープテックが重要な理由

スリープテック(Sleep+Technology)とは、IT技術やAIなどを活用し、睡眠を計測・分析・改善する製品やサービスを指します。近年、このスリープテックが注目されている背景には、日本の深刻な睡眠事情が挙げられます。実は日本は世界一睡眠不足の国だと言われているのです。

日本人の平均睡眠時間は7時間22分です。7時間22分は睡眠時間として十分だと感じるかもしれませんが、多くの国では8時間以上で、OECDが33カ国を対象にした調査では、日本が最も睡眠時間の短い国となっています。大人に対して推奨されている睡眠時間は7〜9時間ですが、厚生労働省の調査によると、日本人で睡眠時間が6時間未満の人は約4割もいるのだそうです。

十分な睡眠がとれていないと、健康に悪影響を及ぼすのは言うまでもありません。睡眠は脳と体の疲れを取り、心身をリフレッシュし、骨や筋肉の成長を促します。睡眠不足が続くとケアレスミスや事故を招き、さらに高血圧や糖尿病などのリスクも高まります。特に4時間未満の睡眠が続くと肥満率が上がり、自律神経失調症やうつ、認知症などを引き起こす危険もあるとされています。

睡眠不足は社会的、経済的にも大きな影響があります。2016年にアメリカで行われた調査では、日本国内の睡眠不足による損失額は年間1,380億ドル、約15兆円にのぼると報告されました。私たちはつい睡眠をおろそかにしがちですが、自らの健康や社会経済のためにも、良い睡眠を得ることはとても大切なのです。

睡眠時無呼吸症候群治療にも…睡眠を分析&改善する最新スリープテック

現在普及しているスリープテックは、睡眠を可視化・解析するものと、実際に睡眠を改善してくれるものの2種類に分けることができます。

まず睡眠を可視化する製品として、ウェアラブル端末やアプリが挙げられます。呼吸数や心拍数、いびき音、寝言、体温、脳波、筋電などをセンシング・解析し、専用アプリでいつ・どんな眠りがとれているかを見ることができます。
大掛かりな装置は不要で、スマートウォッチやリストバンド・指輪型のデバイスを装着して眠るだけで心電図を計測したり、アプリを起動したスマートフォンを置いて睡眠をスコア化するゲームアプリなどもあります。コミュニティなどで情報をシェアしながら他のユーザーと励まし合って続けられるなど、さまざまな工夫が施されています。
こうしたガジェットは日中も装着しておけるので、自分の健康状態のチェックにも役立ちます。

最近は、睡眠時無呼吸症候群の治療に役立てられるデバイスも注目されています。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に呼吸が数秒〜数分止まってしまう病気で、放置しておくと昼間に眠気が強くなって事故を招いたり、メタボや糖尿病、脳卒中、心疾患などのリスクが高まる危険があると考えられています。スリープテックで血中酸素飽和度を測定したり、いびきの振動を検出したりすることで早期発見につなげることができます。

直接睡眠を改善するスリープテックとしては、ユーザーの体型を測定して無理のない姿勢をキープするハイテク寝具などがありますが、脳波センサーが脳波を測定し、AIが寝付きやすい音楽を再生してくれるスマートアイマスクや、寝返りを促すことでいびきを抑制するデバイスなども登場しています。
スリープテックは生活にすぐ取り入れられ、より手軽なものへと進化しています。

持続可能なウェルビーイングを目指してー企業も取り組むスリープテックの未来

健康経営が強調される社会になり、睡眠関連の法人向けサービスも増えました。前述のように、睡眠不足は企業にとっても大きな損失となります。そこで、睡眠を可視化するデバイスや、従業員がSNSで睡眠について相談できるサービスを採用するなど、スリープテックを福利厚生として導入する企業もあります。睡眠データに基づいて報酬を渡す制度を導入する企業も登場しており、多くの企業が従業員のウェルビーイングを重視するよう変化しつつあります。

IT・AI技術に加え、食品やアロマ、音楽などを使って睡眠を改善しようという製品やサービスも生まれ、さまざまな業種が睡眠関連市場に参入しようとしています。
睡眠不足の人が多い日本にとって、スリープテックは伸びしろが大きい分野です。日本での市場規模は前年比100%を超え、数兆円にのぼるという試算もあります。

質の良い睡眠は誰にとっても重要なものです。持続可能なウェルビーイングを目指し、日本人が質・量ともに十分な睡眠がとれるようになるまで、今後もさまざまなスリープテック関連の製品やサービスのジャンルは増えていくでしょう。



まとめ

「寝つきが悪い」「寝た気がしない」「睡眠時間が十分にとれない」など、睡眠不足は私たちが思っている以上に健康や社会に影響を及ぼします。気持ちの良い朝を迎えるために、自分に合ったスリープテックを取り入れてみてはいかがでしょうか? これまでの生活習慣を見直すよいきっかけになるかもしれません。

[参考]
厚生労働省:
https://e-kennet.mhlw.go.jp/tools_sleep/
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

NHK:
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1412.html

日本経済新聞
https://esf.nikkei.co.jp/e/img/insertedEventImage.asp?e=03571&disptype=1&eventitemid=0016&imageid=00001

日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf

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