人権とは? 課題、事例から社会課題を考えてみよう

1948年に「世界人権宣言」で初めて謳われた「人権」ですが、世界にはいまだに多くの人権課題が残っています。そもそも人権とはどのようなものなのでしょうか?課題や取り組み方から社会課題を考えてみましょう。

人権とは?

「人権」とは、「すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」、あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」のことをいいます。

今では当たり前のように認識されている「人権」ですが、公に「人権」が謳われたのは1948年のことでした。1948年12月10日にフランス・パリで開催された第3回国連総会において、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として「世界人権宣言」が採択されました。基本的人権尊重の原則を定めた内容であり、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」、「すべて人は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地、その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」、「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」などと規定されています。この宣言自体は、どこの国でも法的拘束力を持ちません。ただ、世界ではじめて人権の保障を国際的に謳った画期的なものとなっています。

人権とSDGsの関わり

SDGsでも人権に対して数多く言及されています。SDGsが掲げる17の目標の項目名に明記されているわけではありませんが、その内容はどれも「人々が差別されることなく、健全に生きていくこと」と関連しています。

具体的には、目標4「質の高い教育をみんなに」で、教育を受ける権利が提示されています。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、女性への差別撤廃が目標となっています。
また、目標8「働きがいも経済成長も」では、奴隷、強制労働、人身取引の禁止が謳われ、目標16「平和と公正をすべての人に」で、生命や自由、身体の安全への権利が書かれています。どれも人権に対する目標です。





このSDGsでは、すべての国や地域の人々が誰一人取り残されることなく、尊重される社会を目指しています。女性や児童、出身地・国などによる差別や暴力をなくし、すべての人に公正な社会でなければならないと謳われており、人権を守っていくことが理念の根底にあります。



人権課題とその取り組み

世界人権宣言が採択されて70年以上が経ちますが、さまざまな国で人権には今もなお大きな課題があります。そして、その課題を解決するために様々な取り組みが行われています。

世界では深刻な人権侵害に晒されている人たちがいます。例えば児童労働を余儀なくされている子供たちや難民です。 児童労働は子どもの人権侵害であり、SDGsのなかでは、2025年までにすべての形態の児童労働の撤廃に世界が取り組むことが公約されています。ILO(国際労働機関)では2010年から子供たちを守るための様々な指針や基準を設定し活動をしています。 また2016年のILO理事会によって、難民や強制的に移動を余儀なくされた人々への労働市場へのアクセスに関する原則が採択され、児童労働、強制労働、現代の奴隷制、人身取引への取組みの強化を図っています。

日本では、2016年4月から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」を施行し、女性の活躍状況における調査や課題分析などの公表を義務付けています。

2018年7月には「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」を策定し、ホームレスに対する人権啓発や相談、調査救済活動に取り組んでいます。

全国の小・中学校では「子どもの人権SOSミニレター」を配布し、先生や親には言えない子どもの悩みを把握していくことで、人権問題の解決につなげるようになっています。

そして企業では、自社の企業活動に関連するサプライチェーンにおける人権への負の影響を特定し、その予防や軽減に向けどう対処していくのか検討し、対応の追跡調査も含めた情報開示を行うといった人権デューデリジェンス(HRDD:Human rights Due Diligence)も実施が進んでいます。欧州での法制化が進んでいましたが、日本でも2022年9月に政府よりガイドラインが策定され、各企業の取り組みが進められています。

また、身近なところでは各種ハラスメントの問題があります。女性に対するセクシャルハラスメントだけでなく、職場のパワーハラスメント、性区別に対するジェンダーハラスメント、精神的なモラルハラスメントなど、さまざまな種類のハラスメントが存在します。

このようなハラスメントに対しては、職場などさまざまな場で研修や啓発をして、人々にハラスメントの防止対策を周知徹底させる活動が行われています。

まとめ

世界には多くの人権課題があり、それを解決するために、国や企業でさまざまな取り組みが行われています。国や企業の取り組みはもちろん重要ですが、私たち一人ひとり人権課題について知り、どうすれば人権を尊重していけるのか、自分にできることは何か、改めて考えてみることが大切です。

[参考]
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/pdf/202105.pdf
https://www.hurights.or.jp/japan/aside/sdgs/2018/10/sdgs-1.html
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/133586.pdf
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00172.html
https://www.hurights.or.jp/japan/aside/sdgs/SDGs_HR_TABLE_A4.pdf
https://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/child-labour/WCMS_554843/lang--ja/index.htm ※1

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