SDGs10 人や国の不平等をなくそう 目には見えない、機会という格差がつくりだす不平等

2023.10.2

「1%のための経済」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは世界の富の大部分を、たった1%の人々が独占しているという意味です。富だけでなく、教育・就労・社会保障など、世界には多くの格差や不平等が存在し、悪循環の原因となっています。
今回は「人や国の不平等をなくそう」と謳うSDGs10の概要と、不平等をなくすための取り組みについてご紹介します。

SDGs10「人や国の不平等をなくそう」とは何か

SDGs10「人や国の不平等をなくそう」は、国と国との間にある不平等、または同じ国の中でも見られる不平等など、世界中で見られるさまざまな格差をなくすことを目指したもので、そのためのターゲットを設定しています。

■低所得世帯の所得増加
各国の所得下位40%の世帯所得の増加率が、国内平均を上回るようにし、それを持続することを目指します。

■多様な人材の活用
年齢や性別、人種などに関わりなく、社会的・経済的・政治的に取り残されないようにします。これらの実現のために差別的な法律や慣行をなくし、人々が平等な機会をもてるように成果の不平等を是正していきます。
さらに、財政や賃金、社会保障面の整備をすすめることで平等を達成していくことを掲げています。

■法、慣行、金融規制の実施強化
国際的な金融市場でのルール作りと、そのルールがきちんと守られているかを監視するシステム作りを強化します。
そのためにも、国際経済や金融制度について何か決める際には開発途上国も参加し、発言を増やすことが盛り込まれており、より効果的で信頼できる、だれもが納得できる制度を実現していきます。

■その他
計画にもとづいて秩序の取れた安全で責任ある形の移住や移動をすすめ、移民労働者が自国へ送金する際のコストを抑えたり、開発途上国への貿易などの特別な措置や政府開発援助(ODA)などで資金の流入を促進します。

このように、SDGs10は途上国への待遇に注目しており、途上国と先進国との経済格差をなくしていくために、貿易促進や資金の流入を拡大することを求めています。





世界や日本で見られるさまざまな格差――SDGs10が必要な理由

実際、世界で見られる格差はかつてないほど大きくなっています。
国連によると、世界で最も裕福な人は全人口の1%ですが、その1%が世界全体の資産の約33%を所有しているといわれています。一方、最も貧しい人々は世界人口の25%にも及びますが、彼らの資産は全部足してもわずか全体の10%に過ぎません。都市部と農村の経済格差も大きく、農村部に住む極度に貧しい人の割合は都市部の3倍以上にも達します。

経済状態は健康や衛生状態に直結します。新生児死亡率は日本では1000人中1人ほどですが、15以上の国では30〜40人が亡くなっており、その多くはアフリカの途上国です。国によっては障がいのあるなしも格差に繋がり、世界の障がいのある子どものうち、学校に通えているのは2%以下というデータもあります。

2023年9月に発表された「持続可能な開発に関するグローバル・レポート2023」では、若い女性は教育や雇用、訓練を受けられない割合が男性と比べ2倍以上で、経済的に貧困から抜け出す機会が与えられずにいます。

豊かなはずの日本でも、ひとり親家庭や高齢者世帯の貧困が問題となっています。なかでも、ひとり親家庭の貧困は、子どもの教育の機会の不平等につながります。また男女の格差もまだまだ大きく、経済協力開発機構によると、男女の賃金は、男性を100とすると女性は77.9であり、これは女性の非正規雇用が多いことや、女性の管理職が少ないことが原因と考えられています。 機会による不平等は、世界中で見られる大きな問題の一つなのです。


不平等を減らし悪循環を断ち切るには? SDGs10達成への取り組み

SDGs10の達成のため、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

その一つが、フェアトレードの導入です。
これは、特に途上国との貿易において適正価格で継続的に製品や原料を輸入し、生産者の賃金や労働環境を守ろうという取り組みです。2022年のフェアトレード市場は195.6億円と、1年前と比較して38億円増加しました。2013年には100億円に満たなかったことを考えると、10年で2倍ほどになっていることがわかります。

民間企業でも格差をなくすため、女性のキャリアアップ支援、障がい者雇用促進などさまざな取り組みが行われています。
また、外国籍従業員に関しても、社員食堂のメニューを多言語表記にしたり、お祈り部屋を社内に設置するなど、安心して働ける環境づくりを行っている企業もあります。
このような取り組みをおこなう企業が増えていることで、日本の障がい者や外国人の労働者数は徐々に増加しています。

私たちがSDGs10実現に貢献できることの一つに、フェアトレード商品や障がいのある人が作った商品を購入することがあります。
そして、身の周りで今もなお残っている「格差」や「不平等」に対して目を向けることも大切です。これまで「当たり前」とされてきた価値観のままでは「格差」や「不平等」に気付くことは大変難しく、気付かぬうちに見過ごしている可能性もあります。これらは形がなく見えにくいので、まずは自分のなかのアンコンシャスバイアスに気づき、違和感を持つことが格差をなくす一歩となっていきます。



まとめ

世界で見られる格差をなくすためには、単に目に見える格差を今すぐなくすことだけでなく、教育や雇用を通し、すべての人に平等に機会を提供することが必要です。
性別・人種・宗教・障がい等に関わらず、誰もが自分の能力を高められるチャンスを得られるよう取り組むことで、SDGs10の実現に近づくことができるでしょう。


[参考]
内閣府男女共同参画局:
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-33.html

外務省:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal10.html

農林水産省:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_10.html#goal_top

厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/content/001027403.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887554.pdf

国連広報センター:
https://unstats.un.org/sdgs/report/2023/goal-08
https://unstats.un.org/sdgs/report/2023/Goal-10/

ユニセフ:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/10-inequalities/

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