持続可能なウェルビーイングへ。SDGs3とSDGs8で目指す健康と幸福の未来

世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活を大きく変えました。ステイホームを余儀なくされる中で改めて見直されたもののひとつに、心と体、そして社会的に良好な状態を表す「ウェルビーイング(well-being)」があります。このウェルビーイングは話題のSDGsとも大きな関わりを持っています。幸福度をはかる目安となるウェルビーイングはどのようにSDGsと関わっているのでしょうか?
企業として、そして個人で行えるウェルビーイングの取り組みについても紹介します。

ウェルビーイング――心身の幸福をはかるモノサシとは?

ウェルビーイングとは「well(良い)being(状態でいること)」であり、1946年に世界61カ国の代表により署名された「世界保健機関(WHO)憲章」前文で、健康の定義として初登場しました。そこには「Health is a state of complete physical,mental and social well-being」とあり、単に病気を患っていないだけでなく「身体的・精神的・社会的に完全に満たされた状態(ウェルビーイング)」が健康である、と説明されています。

さらに具体的にウェルビーイングを定義したのが、心理学者マーティン・セリグマンです。彼はウェルビーイングを構成するものとして、うれしい・感動といった「積極的な感情(Positive emotion)」、物事に対して没頭したり積極的に関わる「何かへの愛着(Engagement)」、援助を受けたり与えたりする「人との良好な関係(Relationship)」、自分が何のために生きているのかを意識する「人生の目的や意味(Meaning)」、何かを達成して感じる「達成感(Accomplishment)」を挙げました。それぞれの頭文字を取り、これはPERMAモデル、またはPERMAの法則と呼ばれています。

また、世界的な世論調査会社であるギャラップ社は、ウェルビーイングを調査していく中で「キャリア(仕事)」「ソーシャル(人との関わり)」「フィナンシャル(お金)」「フィジカル(心身の健康)」「コミュニティ(地域社会との繋がり)」をウェルビーイングの5要素として挙げています。さらには、国際連合が発表する世界幸福度報告でも、経済的豊かさや健康寿命、自由な選択肢の有無、社会や他者との関わりなどの要素が使われています。

こうした要素が満たされたときに心も体も安らぎ、幸福を感じるとされていることから、ウェルビーイングは、心身の幸福をはかるモノサシといえるかもしれません。

ウェルビーイングの充実 SDGs6やSDGs8の達成との関連性

80年近く前に登場したウェルビーイングですが、近年、多くの人がその重要性に目を向けるようになりました。そして2015年に採択されたSDGsでもウェルビーイングは言及され、その認知度はさらに高まることになったのです。

たとえばSDGs3では「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」を、SDGs6では「安全な水とトイレを世界中に」を掲げ、安全な環境で健康に暮らすことを目指しています。「清潔で安全な水を使う」「トイレで安心して用を足す」「病気になったら病院に行く」といったことは私たちにとっては当たり前となっていますが、これらの安全性が確保され、そこからはじめて食事・運動・睡眠・健康のバランスを整えることができるのです。SDGs3とSDGs6の達成は身体的ウェルビーイングに欠かせないものでしょう。

ウェルビーイングの実現には、ほかの項目も関わってきます。
SDGs8「働きがいも経済成長も」は、すべての人が安心して安全に働けることを目指しています。これは心理的・社会的ウェルビーイングに繋がっており、「達成感」や「キャリア」「フィナンシャル」に関連しています。またSDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」は「ソーシャル」や「コミュニティ」に関わる目標です。

これらのゴールにおいて、ウェルビーイングの充実を目指すことは制度や環境の整備・変容へと繋がり、制度や環境を整え、SDGsを達成することによってさらにウェルビーイングが充実していくことでしょう。これらは密接に繋がっており、どちらも欠かすことのできない考え方であることがわかります。

世界的な新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちがウェルビーイングの重要性に気づくきっかけになりました。この期間中、健康や幸福について改めて考えた人は少なくないでしょう。やっぱり健康が一番と思った人もいれば、家族の大切さを実感した人もいるかもしれません。価値観が多様化しているとはいえ、ウェルビーイングはすべての人にとって必要なものなのです。




企業や個人で取り組むウェルビーイングでSDGsも達成へ

ウェルビーイングの重要性が強調されるようになり、民間企業でもウェルビーイングの取り組みが始まっています。そのひとつが労働環境の見直しです。長時間労働を是正し、柔軟な勤務形態の導入、有給休暇や育児休暇が取りやすい社内の雰囲気作りなど、いわゆる働き方改革の導入です。

さらに、受動喫煙のないオフィス作りや福利厚生の充実など、社員と家族の健康維持のためのサポートを積極的に行う企業も増加しています。ある食品メーカーでは、健康アドバイスアプリを導入し、社員一人ひとりに健康管理サービスを提供しています。
また、徐々に広まりつつある職場での事故ゼロを目指す「VISION ZERO (ビジョンゼロ)活動」も、従業員の身体と精神の健康バランスを守る労働環境整備の施策であり、これはウェルビーイングを目指した取り組み、さらにはSDGs達成を目指した取り組みともいえます。

個人としては、自分のウェルビーイングを高めるために何ができるでしょうか?
まず、周囲の人とのコミュニケーションを深めると一歩踏み出せるかもしれません。例えば、地域や社内のイベント、ボランティアなどに少しでも参加することで、新しい人間関係を築くだけでなく、自分が誰かの役に立っているという実感や達成感を経験できます。こうした成功体験を積み重ねることは幸福感にも繋がるので、ウェルビーイング実現に一歩近づくことができるのではないでしょうか。



まとめ

「本当の幸福とはなにか?」という問題は、昔から人間が追い求めてきたテーマであり、ウェルビーイングはそのひとつの答えといえるかもしれません。
健康、お金、社会や人との関わり・・・、小さなことでも今日から始めてみることで、自分のウェルビーイング充実を目指したいですね。

[参考]
厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000467968.pdf

内閣府:
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/summary22.pdf

公益社団法人 日本WHO協会:
https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

ユニセフ:
https://www.unicef.or.jp/news/2023/0155.html

金澤工業大学:
https://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/wwwr/lab/lps/perma_profiler/perma_profiler.html

おすすめ記事