ウェルビーイングとは? 心身ともに健康な状態を追求しよう

2023.3.3

瞬間的な幸せを意味する「ハピネス」ではなく、持続的な幸せを意味する「ウェルビーイング」という言葉が注目されています。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」につながるウェルビーイングは、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか。日本における取り組みをご紹介します。

ウェルビーイングの意味

ウェルビーイング(Well-being)とは日本語で幸福度と訳されますが、身体的・精神的・社会的という3つの側面において良好な状態にあることを意味しています。

ウェルビーイングという概念が登場したのはかなり古く、1948年に国連(国際連合)の専門機関の1つとして世界保健機関(WHO:World Health Organization)が発足したときに遡ります。

世界保健機関憲章では、「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義されています。

ここでいう「健康」とは、心身の健康のみという狭い意味を指しているのではありません。幸せを感じる感情があることや、社会的に良好な状態を維持していることを含めて満たされているという広い意味だと解釈されています。

このウェルビーイングは、アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマン氏によって「PERMA」という5つの指標が提唱されています。

・Positive Emotion(ポジティブな感情)
・Engagement(何かへの没頭)
・Relationship(人との良い関係)
・Meaning(人生の意義や目的)
・Achievement/ Accomplish(達成)

「PERMA」とは上記5つの単語の頭文字を取って名付けられたものです。人はこの5つの要素を満たしていることで幸せだとされています。

ウェルビーイングが注目されている背景

ウェルビーイングはおよそ75年前に生み出された概念です。しかし日本で最近になって注目されている背景には、世の中が「モノから心の豊かさ」へと価値観が変化してきたことが挙げられます。
そのほかにも、以下のような要素も背景にあります。

■働き方改革
日本政府は一億総活躍社会の実現を掲げて、2019年から働き方改革関連法が順次施行されています。このような働き方改革の施行により、長時間労働の是正や雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、高齢者や女性の就労促進などの実現を目指しています。

■新型コロナウイルスの感染拡大
2020年春から始まったコロナ禍によって価値観も変化しています。企業ではリモートワークが浸透し、自分らしい働き方を考え直すきっかけにもなっています。一方、人との直接の関わりが減ることによるコミュニケーション不足やメンタルヘルスの問題も浮上しています。

■健康経営
経済産業省では健康管理を経営的な視点でとらえ、従業員への健康投資が生産力を向上し、企業の業績向上につながることを期待する「健康経営」を推奨しています。これによって、企業では従業員の健康への関心が高まっています。

密接なつながりをもつウェルビーイングとSDGs

SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に「Good Health and Well-Being」とあるように、年齢に関わらず、すべての人たちの健康的な生活を確保し、福祉を促進していくことを目指しています。

私たちは、個人の幸せを追求するだけでなく、すべての人や社会全体、地球全体が満たされた状態を目指す必要があります。そういった意味においては、SDGsを達成するための価値観の基準がウェルビーイングだと考えることができます。



世界幸福度ランキングでは日本は世界54位

2022年に国連が発表した世界幸福度ランキングでは日本は世界54位。2020年は62位、2021年は56位、2022年は54位と着実に順位を上げていますが、先進国の中では最下位となっています。

評価結果によると、日本は「1人当たりの国内総生産(GDP)」と「健康寿命」が高くなっているものの、「社会的自由」「寛容さ(他者への寛大さ)」「人生評価/主観満足度」が顕著に低くなっています。

現代の日本におけるウェルビーイングは、スタート地点に立ったばかりといえるのかもしれません。



ウェルビーイングに取り組んでいる企業の事例

従業員のウェルビーイングを高めるために、企業では様々な取り組みを行っています。

<企業での取り組み例>
・ウェルビーイングに関するトップメッセージの配信
・労働環境や労働時間の見直し、ルール整備
・多様な働き方の推進
・社内SNSの活用による、風通しの良い職場風土の醸成
・車通勤から自転車通勤への切り替えの促進(補助金の支給)
・社員食堂でのヘルシーメニュー提供
・ウェルネスアプリの導入
・コンプライアンス教育やハラスメント防止の啓発活動
・各種相談窓口の設置
・個人の能力を生かせる職場配置や社内公募制度の運用
・各種教育・研修制度の充実  等

このような取り組みは、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の導入取り組みと重複する部分もあり、ディーセントワークの導入は従業員のウェルビーイングの向上につながっていくと考えることができます。

まとめ

最近よく聞くようになったウェルビーイングですが、意外にも古くからある概念で、SDGsにも関連する考え方となっています。個人、企業や社会がウェルビーイングを目指すことの重要性は、今後ますます高まっていくことでしょう。

[参考]
内閣府:
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/index.html

福井県立大学:
https://www.fpu.ac.jp/rire/publication/column/d154359.html

ウェルビーイング学会:
https://society-of-wellbeing.jp/wp/wp-content/uploads/2022/09/Well-Being_report2022.pdf

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