SDGs3 すべての人に健康と福祉を ニューノーマル時代の医療を考える

SDGsの3番目のゴールは「すべての人に健康と福祉を」です。
現在、世界の発展途上国や紛争地域では幼い命が失われたり、伝染病や汚染物質によって健康被害を受けている人が多くいます。
そこですべての人に医療の恩恵が行き渡ることを目標に、SDGs3が設定されました。
本コラムでは、健康や福祉は世界中の誰もが差別されることなく平等に与えられるべきものだというSDGs3の考え方について解説していきます。

SDGsのゴール3とは?

ニューノーマル

SDGsで掲げられているゴール3は「すべての人に健康と福祉を」です。国連広報センターの示すその目標の正式な表記は「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」となっており、世界のすべての人が心身ともに健康で、社会的にも満たされている幸福な生活を送っていこうというSDGsの目標です。

人々の健康や福祉は、近年著しく進歩しています。
しかし、先進国と途上国との間では、病院や薬局など医療サービスへのアクセスの不平等が存在し、大きな格差が残されています。
多くの途上国では、医師などの医療従事者や医療機関が足りておらず、医療サービスがあっても大都市に偏って存在していることが常態化しています。

そこでSDGs3のゴールを達成するために、2030年までに以下のような目標達成が求められています。

・世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減
・非感染性疾患による若年死亡率を予防や治療で1/3に減少させて、精神保健および福祉を促進
・新生児および5歳未満児の予防可能な死亡を根絶
・世界の道路交通事故による死傷者を半減
・家族計画、情報・教育および性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用可能にする

このほかにも、薬物乱用やアルコールの有害な摂取の防止と治療の強化などが掲げられています。

ニューノーマル時代で進化する医療

途上国と先進国の医療の差を縮める役割として、期待されているのが、ニューノーマル時代の最新医療技術です。

ニューノーマルとは「New(新しい)」と「Normal(常態)」を掛け合わせた言葉で、ここでは、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の生活様式から、コロナ後の新しい生活様式への変化を指します。医療の分野も、ニューノーマルへと大きく変化しました。

1つの例として挙げられるのが、非接触技術の導入です。
これまでも医療現場は衛生的な環境に整えられていましたが、新型コロナウイルスの蔓延以降、非接触で患者の状態を診断できるサービスやデバイスの導入が普及しました。
わかりやすい例としては、身体に当てなくても体温を計ることができる非接触体温計などが挙げられます。

なかでも、遠隔医療はコロナ禍で進化した新しい医療です。
WEBカメラなどを利用して診察ができる遠隔医療により、大都市でなくとも最新の医療サービスを受けられるようになりました。

ほかにも、世界全体でワクチンを公平に供給しようという取り組みも行われました。
途上国では新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れていましたが、ワクチンを複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組みである「COVAXファシリティ」により、接種が進むようになりました。

UHC達成に向けた世界、日本での取り組み

SDGs3の中で、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成が求められています。
UHCとは、「世界中のすべての人が、適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指します。

UHCの実現のため、先進国をはじめとした国際社会の取り組みによって、1990年には年間1260万人いた5歳未満の小児の死亡者数が2021年には500万人に半減しました。

日本政府はUHCに対する国際貢献を推進するため、2017年12月に「UHCフォーラム2017」を開催し、そこでWHO(世界保健機関)やグローバルファンドに対して約29億ドル規模の支援の表明し、取り組みを始めています。
その取り組みの実が結びつつあるのが、アフリカのルワンダ共和国です。

ルワンダは1990年からの内戦と1994年のジェノサイド(大量虐殺)という悲惨な歴史を経て、国を挙げ平和再構築と国家再建に取り組んでいる国です。
現在、世界163か国中124位とSDGs達成度が低い国ではありますが、ICT(情報通信技術)を積極的に活用しながらSDGsを推進していこうとしています。

具体的な取り組みとして、自律飛行するドローンの発着拠点と医療機関を結び、血液や医薬品を届ける試みが2016年からスタートしており、この試みによって輸送網に課題があっても、血液や医薬品を確実に医療機関へと届けられるようになりました。

また2020年から日本のICT技術を活用し、日本とルワンダの専門医を結ぶ遠隔診療基盤を構築した周産期医療のサービスを提供しています。 これによって、医療関係者間コミュニケーションアプリを利用し、現地の国立病院と日本の大学病院を接続することで、AI診断や日本の専門医からの支援を受けられるのです。
日本からの適切なスキルやノウハウを活かすことで、妊婦の胎内管理や新生児管理を効果的に行い、科学的根拠に基づいた医療サービスの提供を通して現地の母子保健医療の向上に寄与する医療サービスへとつなげています。

テクノロジーによる医療の普及は、すべての人に健康と福祉を行き渡らせるとして期待されています。

しかし、世界にはまだまだ多くの課題が残されています。今でもサハラ砂漠以南のアフリカ地域では、子どもが風邪にかかり肺炎になると2人に1人は治療を受けられない医療状況が続いています。
日本では人口414人に1人の割合で医師がいますが、アフリカでは数万人に1人の割合しか医師がいないという国も珍しくありません。 SDGs3は、どの国でもこのような状況を無くすことを目標としています。

SDGs3のために私たちができること

SDGs3達成のために、私たち一人ひとりができることもあります。
その一つとして、ユニセフ(国際連合児童基金)や国際NGO組織に対して寄付や募金を行うことです。
その都度寄付を行うだけでなく、継続した支援のために定期的に寄付金が引き落とされる継続寄付を行ってみてもよいでしょう。

ほかにも、ボランティア活動に参加して、国際支援団体の活動をサポートすることもできます。海外の現地へ赴いてボランティアを行うこともできますし、日本国内でもできるボランティア活動も用意されています。

また、心身だけではなく、社会的にも満たされた状態であることを指す言葉に「ウェルビーイング(Well-Being)」があります。このウェルビーイングという言葉はSDGs3のゴールにも含まれており、そのためウェルビーイングは「ポストSDGs」と呼ばれることもあります。
自分自身はもちろんですが、自分の周りの人のウェルビーイングを追及することも、SDGs3の達成に貢献することだといえます。







まとめ

先進国と途上国との間には、病院や薬局などの医療サービスの大きな格差が残されており、現在も多くの人が治療を受けられずに亡くなっています。
このような現状を無くし、すべての人に健康と福祉を行き渡らせるためにSDGs3の目標が設定されました。SDGs3を達成するためには、ニューノーマル時代で進化する医療が重要なキーワードとなってくるでしょう。
あわせて、私たち一人ひとりができることを実践することが大切です。

[参考]
厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000467968.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000940700.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158223_00002.html
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/r2fy_jissho_kishoukai.pdf

日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/3-health/
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/covax/
https://www.unicef.or.jp/news/2023/0001.html

JETRO 日本貿易振興機構:
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Column/ISQ000015/ISQ000015_005.html

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