SDGs16 平和と公正をすべての人に 広く影響を受ける負の連鎖から救うアウトリーチ支援

2023.10.31

世界では、多くの人が暴力や虐待で亡くなっています。SDGs16はこうした悲惨な状況を改善し、平和と公正をすべての人に行きわたらせることを目指して設定されました。SDGs16が具体的に掲げる実現への道と、世界や日本で達成に向けて始まった取り組みを紹介します。

防ぐのは戦争やテロだけ? SDGs16「平和と公正をすべての人に」とは

世界では、暴力や不平等によって苦しめられている人が大勢います。ウクライナや中東などでの戦争・テロのほか、様々な暴力や不平等がいまも残されており、持続可能な社会の実現には平和と公正が欠かせません。SDGs16では、平和で、誰もが受け入れられ、すべての人が法や制度で守られる社会をつくることを目指し、そのためのターゲットが設定されています。

■暴力の撲滅
あらゆる場所でのあらゆる人への暴力を減らすことを求めています。中でも、子どもに対する暴力、虐待や人身売買、搾取のない社会を目指します。

■法による公平性と公正の確保
すべての人が法律で守られ、また、開発途上国も含め、国際的に法律に従って問題を解決するため、だれでも情報を入手でき、差別のない、公正な司法を利用できるようにすることを目指します。あらゆる人が法で守られるためには、すべての人が出生登録を含めた法的な身分証明を持つことが不可欠です。

■組織的な犯罪をなくす
テロや犯罪をなくすため、国際的な協力のもとに、違法な資金や武器の取引、汚職や贈賄を減らすことを求めています。そのためにはこれらの問題に取り組む、公正な機関の力を強めることが必要です。

こうしてみると、SDGs16「平和と公正をすべての人に」は単に戦争やテロをなくすことだけを目標としたものではないことが分かります。SDGs16は、すべての人が公正な法律や制度で守られる社会を目指したものなのです。



環境が負の連鎖に SDGs16がすべての国に必要な理由

平和と公正が必要なのは、戦争やテロが起きている国々だけではありません。ユニセフによると、世界の2〜4歳の子どもたちの75%が日常的に保護者から暴力的なしつけを受けており、5分に1人の割合で子どもたちが暴力によって亡くなっています。しかも、家庭での子どもへの暴力が法律で禁止されている国は世界でもわずか30%程度で、65カ国に過ぎません。
多くの国では、親が子どもを虐待しても罪に問われない可能性があるということです。

また2019年の時点で、世界の5歳未満の子どものうち4人に1人(約1億6,600万人)が、出生登録をされていません。出生登録がないということは、教育や予防接種などの公的サービスが受けられず、犯罪に遭っても裁判を受けられないため、その子どもたちはいわば「存在していない」ものとされています。

一方、「平和」といわれる日本ではどうでしょうか?2019年、改正児童虐待防止法等が成立し、日本は世界で59番目の体罰全面禁止国になりました。それでも週に1人、年間約50人もの子どもが虐待によって亡くなっています。

また、モラルハラスメントや暴言や態度での支配、行動の制限といった精神的暴力についても問題視されています。新型コロナウィルス感染症の世界的な流行によって配偶者間暴力の問題が浮き彫りとなりました。こうした中、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(ドメスティックバイオレンス(DV)防止法)が改正され、身体への暴力である身体的DVだけでなく、精神的暴力についても保護対象が拡大されました(2024年4月施行)。精神的暴力の被害はDV相談の6割以上を占め、またDV被害の多くは女性と子どもです。ジェンダーギャップが大きい日本では、経済的な問題などを理由に離婚をためらい、さらには被害から逃げることも抑制されてしまうことがあります。負の環境におかれた子どもたちの権利は奪われ、さらなる負の連鎖へと繋がる恐れがあるため、改善が急務とされています。

さらに、SDGs16のターゲットとして、あらゆる汚職や贈賄を減らすことが設定されています。汚職や賄賂の問題は日本を含めどこの国でも起こっている問題であり、紛争や暴力、不当労働などに繋がるこれらを減らすことが公正な社会には欠かせません。SDGs16「平和と公正をすべての人に」は、すべての国にとって必要な目標なのです。


アウトリーチな地域支援事業でSDGs16達成へ! 平和と公正実現への取組み

SDGs16の実現に向けて、世界ではどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか?
ユニセフは世界の約190の国と地域で子どもを守る活動をおこなっていますし、「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)」は約135カ国で難民を保護・支援しています。

日本でも、子どもの虐待防止を訴えるなど、イベントや街頭で啓発活動をおこなっている市民団体がたくさんありますが、支援が必要な人の中には、自分から支援を求めることが難しい人が多くいます。
そこで、当事者からのSOSを待つのではなく、こちらから積極的に出向いて手を伸ばす「アウトリーチ」で、負の連鎖から救い出す取り組みも広まりを見せています。

仙台市では、SNSや家庭訪問による相談や繁華街での夜回りなどをおこない、貧困や孤立などの課題を抱える女性をサポートしています。このように、NPOや市民団体のアウトリーチ活動から公的機関の支援を通して、問題改善につながることも少なくありません。

また、個人でできる取り組みとして、フェアトレード商品など、平和と公正を目指して作られた製品を購入することでSDGs16に貢献することができます。
たとえばスウェーデンのある時計ブランドは、回収した違法銃器を溶かして作った金属で時計を制作・販売しています。これは武器による暴力行為の撲滅活動を推進してきたNPO法人が立ち上げた活動で、売上金の一部を紛争で引き裂かれた地域の復興や、武器によって負傷した被害者を助けるために寄付されています。

私たちの身近な場所でも、暴力や虐待、差別を目にする機会があるかもしれません。そんな時は見て見ぬふりをせず、一声かける勇気や必要な機関に電話をかける勇気、手を差し伸べる勇気を持ちたいものです。


まとめ

SDGs16は、戦争やテロに苦しむ国だけではなく、すべての国にとって必要な目標です。「世界の平和と公正」と聞くと、とても壮大な理想のように聞こえますが、その実現は、私たち一人ひとりの今日の行動にかかっているのです。

[参考]
内閣府:
https://www.gender.go.jp/policy/chihou_renkei/kofukin/r04/pdf/jissi/4-14.pdf
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r04/pdf-index.html
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/01.html

こども家庭庁:
https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/gyakutai_boushi/hogojirei/19-houkoku/

日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/16-peace/
https://www.unicef.or.jp/news/2019/0179.html

公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
https://www.savechildren.or.jp/lp/banningphp5/

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