SDGs5 ジェンダー平等を実現しよう 女性活躍と地位向上のために

「毎年1,200万人の女の子が18歳未満で無理やり結婚させられている」と聞くとやりきれない気持ちになりますが、「ジェンダー不平等」の問題は開発途上国だけの話ではありません。
日本を含む先進国でも、ジェンダー平等には多くのハードルがあります。
これらを解消するために、女性の活躍を推進するために必要な課題と意識改革をどのように進めていけばよいのでしょうか?女性活躍と地位向上のために、世界で始まっている取り組みをご紹介します。

SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」とは?

ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」は、女性と女の子に対する差別をなくし、すべての人が平等に能力を伸ばせる社会の実現を目指すものです。

「ジェンダー」は性の多様性やLGBTQIAなど、性的マイノリティに関連して耳にすることが多い言葉かもしれませんが、もともとは社会的・文化的な性差を指します。
ゴール5でフォーカスしているのは、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といった固定観念に起因する差別です。「女性らしく」「女性なら当然である」と社会が作り上げてきた様々なルールや役割分担により、これまで多くの女性が抑圧され、自分の能力を伸ばす機会を奪われてきました。

ゴール5では、ジェンダー平等を達成するために9つのターゲットを掲げています。まず、すべての女性と女の子への暴力をなくすこと、そして女性や女の子を傷つける有害な習慣をなくすことです。さらに、多くの女性が無報酬で行っている家事や育児、介護などの重要性をもっと評価し、家庭内の役割分担などを通じて認め合うことも含まれています。
加えて、女性が性や出産など、自分の体に対する権利を自分で行使できることや、男性と同じように政治や経済、社会活動に参加し、意思決定に加わる機会を確保することなども目指しており、そのために必要な手段として、インターネットへのアクセスや適切な政策・法律作りが挙げられています。

ゴール5の達成は、女性だけでなくすべての人にとって重要な課題です。
世界や日本において、女性たちが経験している「ジェンダー不平等」について考えてみましょう。


「ジェンダー平等を実現しよう」がなぜ必要か

ジェンダー不平等が招く不幸のひとつが、児童婚の慣習です。ユニセフによると、世界では毎年18歳未満の女の子が1,200万人以上、強制的に結婚させられています。これは毎日3万人以上の女の子が無理やり結婚させられている計算になります。早すぎる結婚により女の子は教育を受ける機会を奪われるだけでなく、未発達な体での妊娠・出産により、心と体に大きな傷を負うのです。

また「大人になるための通過儀礼」として行われるFGM(女性器切除)の慣習も大きな問題です。FGMは不衛生な環境の中、医療知識のない人が麻酔なしで行うことが多く、激痛と大出血を伴います。このため、施術後に健康的な生活を送れなくなり、感染症により命を落とす女の子もいるのです。これは「一部の国の珍しい習慣」ではありません。現在でも30もの国で2億人以上の女の子がFGMを受けており、2030年までにさらに1億5,000万人もの少女がFGMを受けるとされています。

ジェンダー不平等は先進国でも問題となっています。たとえば科学分野での各国の女性研究者の比率は半分以下で、なかでも日本は17%と突出して低くなっており、アンコンシャスバイアスによる理系への進路の選びにくさや、結婚後、育児や介護の大部分を引き受けざるを得ないという社会的状況が女性研究者のキャリアアップを阻んでいる要因とみられています。
さらに、2023年3月、世界経済フォーラムが発表した最新の「ジェンダーギャップ指数」で、日本は過去最低の125位となりました。このデータは世界146か国の男女平等の度合いを数値化したものですが、日本の政界や管理職での女性比率の低さと所得格差の大きさが際立っています。




女性活躍のための世界と日本の取り組み

世界中でゴール5の実現を目指す取り組みが進められています。 まず、政府や様々なコミュニティの働きにより、児童婚の違法性が知られるようになりました。その結果、2019年までの10年間で南アジアでの児童婚は3分の1以上減少し、FGMに関しても粘り強い反対運動のおかげで、ケニアなどいくつかの国で「FGMは違法」という法案が可決され、FGMを中止する地域も増えてきています。

日本でも厚生労働省が女性支援プロジェクトを打ち出し、雇用条件や労働環境の見直しを行う企業が増加しています。2023年の統一地方選挙では、過去最高の7人の女性市長が誕生するなど、徐々に男女が平等に活躍できる社会になってきています。

とはいえ、仕組み作りだけでは不十分です。大事なのは私たちの意識を変えることで、そこで大きな役割を果たすのは教育です。
たとえばルワンダの中学校では、「女の子がするもの」と思われていた掃除などを男の子のグループが行い、人々の意識を変えようとしています。
日本の教育現場でもさまざまな取り組みがおこなわれており、東京のある高等学校では、20年以上ジェンダーバイアスを考える授業を行っています。
私たちが持っている先入観や固定観念が、周りの誰かのチャンスを奪っている可能性があるということに目を向け、子どもたちが社会に出る前にジェンダー平等の意識を育むことは、社会全体の固定観念を変えることにもつながるのです。


まとめ

ジェンダー平等は苦しんでいる女性を救うだけでなく、国の文化や経済の成長にもつながります。女性活躍が進めば、世界の経済成長は大きく進み、日本では1人当たりのGDPが4%引き上げられるという試算もあるほどです。
ジェンダー平等はSDGs全体の目的にも広く関わっています。すべての人が性別にかかわらず活躍し、平等に恩恵を受けるために必要な、解決しなければならない課題なのです。


[参考]
日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/5-gender/
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act04_03.html
https://www.unicef.or.jp/news/2023/0075.html

独立行政法人 国立女性教育会館:
https://www.nwec.go.jp/about/publish/jpk9qj0000000ady-att/shokicaria-press.pdf

公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン:
https://www.plan-international.jp/girl/

フェアトレードジャパン:
https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/intl_standard.php

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