SDGs12・SDGs14へ課題 マイクロプラスチックから海を守るイノベーション

現在、毎年ジェット機5万機分にも及ぶプラスチックごみが海に流れ込み、海の生態系に大きな被害を与えているといわれています。こうしたプラスチックは自然分解されることなく、数百年にわたり生き物や自然に影響を与え続けますが、なかでも近年では、極めて小さいプラスチックである「マイクロプラスチック」が問題視されています。
このマイクロプラスチック問題の解決のために、私たちはなにができるのでしょうか?マイクロプラスチック問題の解決に向けた「脱プラスチック」への動きや、期待が寄せられる新しい技術についてご紹介します。

毎年ジェット機5万機分が海に流入!? 深刻化するマイクロプラスチック問題とは

マイクロプラスチックとは、直径5ミリ以下の非常に細かなプラスチックのカケラを指します。なかでも肉眼では見えないほど細かいものは「マイクロビーズ(マイクロプラスチックビーズ)」と呼ばれます。

マイクロプラスチックは発生のしかたによって2種類に分けられます。製品の原料としてもともと細かい状態で生産されるものが「一次マイクロプラスチック」、プラスチックごみが紫外線や波により劣化・粉砕されて細かくなったのが「二次マイクロプラスチック」です。

ペットボトルやビニール袋など、プラごみ由来の「二次マイクロプラスチック」はもちろん環境に大きな影響を与えますが、私たちが無意識のうちに流出させているかもしれないのは「一次マイクロプラスチック」です。

この一次マイクロプラスチック、実は身の回りの多くの製品に含まれています。例えば、ファンデーションや口紅などの化粧品や日焼け止めには、光の拡散やしっとり感を与える目的でマイクロビーズが使用されることがあります。また、肌の角質や汚れを除去する目的で、洗顔料や歯磨き粉にスクラブ剤として添加されることもありました。

これらマイクロビーズは0.001mm〜0.1mmと非常に小さいため、洗面所から流れるとそのまま下水処理施設を通過し、川や海に流出してしまうのです。

SDGs12や14も関連―マイクロプラスチックの世界的課題

マイクロプラスチックは、プラごみと同じく、自然分解されることなく海の生態系を傷つけ続けます。小さい粒だけに魚やサンゴ、プランクトンにも飲み込まれ、食物連鎖による食への影響、海中の汚染物質を取り込んで汚染を広げる危険性も懸念されています。近年では海だけでなく、大気中に舞うマイクロプラスチックの影響や、マイクロプラスチック自体に含まれる有害化学物質も問題視されています。

SDGsでもプラスチック問題は言及されています。ゴール12「つくる責任 つかう責任」では環境に害を与える廃棄物を適切に管理し、ゴミを減らすこと、ゴール14「海の豊かさを守ろう」では海洋生物を守るために海洋ゴミを減らすことを掲げていますが、もちろんこれにはマイクロプラスチックも含まれます。

そのため世界各国では、マイクロビーズの使用に関して法律による規制が進んでいます。すでにマイクロビーズを使った製品の製造・販売を禁止している国もあります。日本でも近年、関係団体が自主的に改善するよう各メーカーに促すようになりました。洗顔料やボティソープなど、すぐに水で洗い流す製品については対策が進んでいますが、法律による規制はなく、日焼け止めやファンデーションなど洗い流さない製品については現在もマイクロビーズが多くの製品で使用されています。

こうしたなか、最新技術を駆使してプラスチック問題を解決しようという新しい流れが登場し、注目されています。

新技術で脱プラや分解・回収!? プラごみ解決に期待が集まるイノベーション

ストローなどのプラスチック製品を自然由来製品に置き換えようという動きがありますが、マイクロプラスチックについても、代替品を使おうとする取り組みが始まっています。

すでに洗顔料などのスクラブは、天然塩や米ぬか、果物の種など自然由来のものに置き換えられつつあります。対策が遅れていた化粧品に含まれるマイクロビーズの見直しも始まりました。あるメーカーはアミノ酸技術を活用し、自然由来の生分解性に優れた粉体を作り上げました。この技術は、マイクロビーズを使用しなくても、反射光を散乱させ凹凸をぼかすソフトフォーカス機能でなめらかさ、しっとり感を実現しており、すでに様々な製品に活用されています。

別のメーカーは微生物の働きを利用して、100%植物由来のバイオマスプラスチックを開発しました。この素材は30℃の海水で半年以内に9割が水とCO2に分解されるといいます。

回収が困難とされてきた、すでに放出されたプラスチックの分解・回収についてもイノベーションが起こっています。エアーによる吸引や、特殊なフィルターを取り付けた回収装置などが開発されています。また、マイクロプラスチックを「食べて分解する」いくつかの細菌や酵素が発見され、実用化が待たれています。

まとめ

安価で軽くて丈夫なプラスチックは、今や私たちの生活に欠かせませんが、マイクロプラスチックという難しい問題を抱えています。いきなりすべてのプラスチック製品を手放すことはできなくても、自然由来成分の製品を購入したり、海の清掃活動に参加したり、清掃活動を行う企業や団体を消費活動で応援するなど、個人でもできる海と海の生き物を守るアクションに目を向けてみませんか?

[参考]
環境省:
https://www.env.go.jp/council/03recycle/211122_SS2.pdf
https://www.env.go.jp/content/900542809.pdf

経済産業省:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/pdf/016_04_00.pdf

WWFジャパン:
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス:
https://cloma.net/

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