サステナブルやロハスと何が違う? 最近よく見る「エシカル」、その歴史

近年、社会課題や自然環境の悪化に直面し、これまでのライフスタイルを見直そうという流れが世界中で起きています。そのひとつが「エシカル」という概念です。エシカルは、よく耳にする「サステナブル」や「ロハス」、「エコ」などの言葉とどこが違うのでしょうか?
エシカルの歴史を振り返りながら、持続可能な社会を実現するための身近なエシカルを考えます。

日本でも徐々に浸透? 「エシカル」の意味と歴史

「エシカル(ethical)」は、80年代から欧米で注目されるようになった言葉です。
1989年には、エシカルなアイデアを広める理念のもと、雑誌「Ethical Consumer」がイギリスで創刊されました。この雑誌は「どんな商品がエシカルか」、つまりどの製品やサービスが人と地球にやさしく、持続可能な社会に貢献するのかという基準を提供しており、現在、Webサイトと紙面の両方で毎月約10万人に読まれています。

そして1997年に、イギリスのブレア首相(当時)が植民地政策について述べたスピーチで「犠牲の上に豊かさが成り立ってはならない。国と国ではなく、人と人との関係で考えるエシカルアプローチが大事」と語り、一躍、世界的に注目されるようになりました。この「エシカルアプローチ」とは、人道的な外交の大切さを指しています。

エシカルは日本語では「倫理的な」と訳されます。「エシカルアプローチ」からも分かりますが、人の良心から発生する、自分のことだけを考えない利他的で道徳的な行動がエシカルですが、最近はよく消費活動と結び付けられて使用されています。

日本では10年ほどかけて少しずつ耳にするようになったエシカルですが、消費者庁が2022年に行った調査で「エシカル消費という言葉・内容を知っている」と答えた人は、わずか7.6%でした。徐々に浸透しているとはいえ、エシカルの認知度はまだまだこれからのようです。


最近よく見かけるサステナブル、ロハス、エコ…エシカルとどう違う?

エシカルとよく似た概念として「サステナブル」や「ロハス」「エコ」などがありますが、これらはどのような違いがあるのでしょうか?

なかでも、私たちに一番なじみがあるのが「エコ」ではないでしょうか? エコは「エコロジー(ecology)」の略語で、「自然環境・生態系」を指します。
自然環境に配慮した活動、たとえば節水や節電、ゴミの分別、フードロス削減、リサイクルなど、こうした活動がエコです。

エコより少し遅れて2000年前後に「ロハス(LOHAS)」が登場しました。ロハスは「Lifestyles of Health and Sustainability」の頭文字を取った言葉で、「健康と持続可能性を大事にするライフスタイル」という意味です。
先ほどのエコとの違いは、自分の健康・自分の快適さを大事にするという要素が入っている点です。エコが「節約」に結び付きやすいのに対し、「ロハス」は多少値段が高くても安全で健康に良く、自分に快適な質の良いものを選ぼうという意識が特徴です。

最近では「サステナブル(sustainable)」という言葉をよく耳にします。sustain(持続する)+able(〜が可能)で「持続可能な」と訳されます。
今の地球環境を壊さず、人も自然もずっと維持できる社会の実現を目指した活動や製品を指す言葉です。

目指す方向は同じ! 持続可能な社会実現のためのエシカルな行動とは

こう考えると、エシカルやエコ、ロハス、サステナブルも、アプローチは多少違っても、目指す方向や具体的な行動にはそれほど大きな違いはありません。「サステナブル」という大きな目的があり、そのための具体的な取り組みがエコやロハス、エシカルだと言えるかもしれません。そしてどの言葉が生まれた背景にも、悪化する自然環境や危機に晒されている生態系、それらに影響を受けている社会への不安や危機感があります。

地球環境の悪化は深刻であり、今や待ったなしの状態です。温暖化は進み、毎日100種以上の野生生物種が絶滅しています。劣悪な環境で働き、お腹を空かせている子どもたちは多くいる一方で、先進国では大量の食べ物が廃棄されています。こうしたニュースを見聞きして、焦りや虚しさや不安を感じることもあるのではないでしょうか。

エコでもロハスでもエシカルでも、今の自分のライフスタイルに合った、自分ができることから始めてみるのはいかがでしょうか? 暖房の設定温度を1℃下げることはエコな取り組みですし、リユース可能な食器や環境に優しく安全なカトラリーを使い、プラスチックごみを出さないようにすることはロハスな取り組みです。適正価格で製造・取引された上質なフェアトレード商品の購入や、不揃いなワケあり野菜の購入などはエシカルな取り組みです。

一つひとつは小さなことかもしれません。しかし、一人ひとりがこれらの考え方を理解し取り組むことは、持続可能な社会の実現のための大きな一歩となるでしょう。



まとめ

これまで当たり前だと思っていた消費行動が、実は自然を傷つけ、誰かの暮らしを圧迫していたかもしれません。
私たちは毎日たくさんの選択をしながら生きています。いくつかの選択肢のなかから、環境や社会への影響を含めて「なにが最適か」を考え、選択できるといいですね。どんなに小さな選択でも、自分ができることからはじめてみてはいかがでしょうか?

[参考]
環境省:
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010302.html

消費者庁:
https://www.ethical.caa.go.jp/ethical-consumption.html
https://www.caa.go.jp/notice/assets/survey_003_221222_0001.pdf
https://www.ethical.caa.go.jp/

国立研究開発法人 国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/kanko/news/12/12-5/12-5-05.html

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