ゼロエミッションの取り組み。廃棄物削減への課題と連携

人が生活する上では、多少なりともゴミは出てしまうもの――。そんな「当たり前」の考えが、当たり前でなくなる日が来るかもしれません。廃棄物の排出をゼロにすることを目指すゼロエミッションは、どのような方法で実現が可能になるのでしょうか? すべての資源を循環させる社会に向け、すでに動き始めている仕組みを解説します。

ゼロエミッションとは? 資源循環型社会を目指す試み

毎日生活をしていると多少なりとも廃棄物は出てしまうもので、燃えるゴミや燃えないゴミ、下水など、私たちは日々いろいろなものを廃棄・排出しながら暮らしています。
そこで、廃棄される量をできるだけ減らし、さらにリサイクルすることで廃棄物をゼロに近づけようとする「ゼロエミッション」が注目されています。この「ゼロエミッション」は「廃棄物・排出物(emission)をゼロにする」という理念で、今から約30年前に誕生しました。

現代は「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」型の社会なので、ゼロエミッションを実現するためにはモノ作りの現場から消費活動に至るまで、意識の大きな変化が必要です。


廃棄物処理に2兆円!? ゼロエミッションが必要な理由

ゼロエミッションが注目される理由のひとつが、廃棄物の処理問題です。環境省によると、毎年東京ドーム100杯以上のゴミが排出され、2兆円以上がゴミ処理に使われています。これは、1人当たり毎年1万5000円以上の税金をゴミのために払っている計算になります。

世界で栽培・生産された食品の約40%が廃棄されているといわれていますが、その一方で世界の10人に1人が飢餓状態にあります。ゴミの約半分は生ゴミですが、まだ食べられるのに捨てられている食品もたくさんあります。いわゆるフードロス問題です。

日本は人口1人当たりのフードロス量がとても多い国で、形が不揃いだったり小さな傷がある食品や賞味期限切れの商品は、これまで廃棄されていました。近年は様々なフードロス対策がとられており、賞味期限を「年月日」表示から「年月」表示へと変更したり、商品の過剰在庫を削減することで、フードロス対策と共に環境負荷を減らす取り組みも行われています。

衣類に関しては「大量生産」「大量消費」のシステムが、廃棄物処理に影響を与えています。
チリのアタカマ砂漠では、積み上げられた衣服の山が問題となっています。アメリカ、ドイツ、イギリス、日本などの先進国で着られなくなった衣類や売れ残った衣類の一部は、パキスタンやインド、マレーシアなどへ輸出されます。そこで再販売に回されますが、多くの衣類は売れ残り、行き場をなくした大量の衣類が不法に捨てられ、アタカマ砂漠に積み上げられたとみられています。放置された衣類の化学繊維は土壌汚染の原因にもなっています。

ゼロエミッション実現へ向けた取り組み&コストアップという課題

ゼロエミッション実現に向け、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
自治体の取り組みとしてよく知られているのが、徳島県上勝町です。同町にはゴミ収集車は走っていません。生ゴミは自分で処理機にかけ、残りはゴミステーションに持ち込み13種類45分別に仕分けします。ステーションにはまだ使える物を持ち込めるショップがあり、欲しいものがあれば無料で持ち帰ることができます。こうした取り組みを続け、2016年にはリサイクル率80%以上を達成しました。残りの20%を減らすため、今も町民全員が連携して取り組んでいます。

企業でもさまざまな取り組みが行われています。ある住宅メーカーでは、廃棄物を細かく分類し、さらに工場で再分別するシステムにより、ゼロエミッションを達成しました。あるアパレルメーカーでは、ほぼすべての産業廃棄物をリサイクルし、生地の裁ち屑で商品の下げ札を作る試みも開始しています。こうした取り組みを推し進めるには、企業全体、サプライチェーン全体の連携が欠かせません。

廃棄物のうち、7割以上は私たちが出す生活ゴミといわれています。ゼロエミッションを達成するためには、私たちもともに取り組んでいくことが不可欠だといえます。
不必要な買い物を減らすことや量り売りを利用すること、過剰な梱包を避けることなど、普段の生活で手軽にできる取り組みから、ゼロエミッションに協力してみるのはいかがでしょうか?


まとめ

ゼロエミッションは、個人や一企業の努力だけで達成できるものではなく、社会全体の連携があってこそ可能になります。
資源循環型社会に移行するためには、一人ひとりが「これは本当に必要な物なのか?」と意識する暮らしを心掛けるところからスタートします。
何かを購入する前から、もうゼロエミッションは始まっているのです。

[参考]
環境省:
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/html/hj22020301.html

農林水産省:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_3-15.pdf

徳島県上勝町役場 企画環境課:
https://zwtk.jp/

日本財団:
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/84322/food_loss

国民生活センター:
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202104_06.pdf

NHK:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220218/k10013486591000.html

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