SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう イノベーションが作る未来

2023.9.1

私たちは毎日当たり前のように清潔で安全な水や電気を使い、健康で快適な生活を送っています。このように安心して生活ができるのは、インフラが整備されているからです。
インフラは時に国の経済に大きな影響を与え、気候変動対策でも重要な役割を果たすことがあることをご存じでしょうか? 今回は、インフラと産業の重要性について解説します。
インフラが未整備の開発途上国 で起きている様々な問題と、SDGs9達成のために私たちができることについて考えます。

SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは

SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の正式な表記は「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」で、これを達成するための5つの目標と3つの実現方法を掲げています。SDGs9のポイントは「インフラ整備」「産業化」「イノベーション推進」の3つとなっています。

この3つには密接な関わりがあります。水道や電気、道路などの基礎インフラが整備されていないと産業の発達や技術革新は難しく、何かを生産しても道路や交通が整備されていなければ、迅速に輸送することができません。
さらに災害が甚大化しつつある現在、文頭に挙げられている「強靭(レジリエント)なインフラ」は重要な課題です。強靭とはしなやかで強いことを指し、災害や事故が起きてもいち早く元の状態に回復できるしなやかなインフラの整備が求められています。

産業に関しては、2030年までに雇用の増大とGDP(国内総生産)における農業や漁業以外の産業の割合を増やし、イノベーションを促進して研究開発従事者を増やすことなどを目標としています。
ほかにも、途上国への資金と技術の支援を強め、誰もが安くインターネットを使えるようにすることが強調されています。

SDGs9はなぜ必要か――世界のインフラ整備とイノベーションの現状

SDGs9の背景には、インフラと産業の世界的な格差があります。今、世界では7億人が電力を使えず、27億人がインターネットにアクセスできません。また、5億人はトイレがないため屋外で用を足し、20億人が安全に管理された飲み水を手に入れることができない状態です。

それらの国々は生活水準が低いだけでなく、経済成長も停滞しています。農産物を例に挙げると、先進国は自国で加工できますが、途上国はせっかく農産物を生産しても、自国で加工することが困難です。これは、インフラが整備されれば途上国に大きなビジネスチャンスがあるということになります。
途上国が自力で経済活動を行えるようになればグローバルな経済成長にもつながり、それが持続可能な産業であれば気候変動問題などSDGsの他のゴールにもつながるのです。

SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)のSDGs達成度ランキングによると、SDGs9に関して日本は『達成済み』とされていますが、問題がないわけではありません。水道管やトンネルなど、高度成長期に一気に建設されたインフラの老朽化はたびたび問題になっています。また、少子高齢化による生産年齢人口不足や研究開発費の不足、資源不足などの課題を打破するためには、やはり持続可能なイノベーションが必要です。

途上国支援とイノベーション促進でSDGs9達成へ

SDGs9を達成するため、すでに日本を含め各国の企業や団体が、途上国への支援を行っています。たとえば東アフリカのウガンダ共和国は、同エリアの経済活動の中心を担う国の一つでありながら渋滞や混雑が激しく、交通インフラの未整備が物流のネックになってきました。日本は以前から支援を行っていますが、現在は首都カンパラで無償資金協力「カンパラ市交通管制改善計画」を実施中です。車両感知器や信号機の設置を含めた信号交差点整備等が計画されています。
南アフリカ共和国でも日本企業が中心となって海水と排水から飲料水を生産する試みが行われるなど、途上国への支援とイノベーション促進が進められ、さらに、途上国のスタートアップを支援するプロジェクトや研修制度も始まっています。

日本もSDGs9を今後も高いレベルで維持していくため、新しい技術が開発されています。
通信会社はどこでも安定した通信が行えるよう基地局の整備を進めており、同時に災害に備えた予備電源を強化しています。

持続可能なエネルギー関連技術や、インフラ点検技術も進化しています。
医療画像診断技術を応用した最新システムでは、髪の毛1本分程の幅のコンクリートのひびさえも発見できるそうです。
また、日本政府は「科学技術・イノベーション基本計画」で「Society5.0」実現に向け、研究開発投資を強化することを表明しました。

私たちも途上国支援を行っている団体や企業を支援することで、SDGs9達成に貢献できます。
さらに身近なインフラに関心を持ち、防災やセキュリティへの知識を身につけることも大切です。
毎日蛇口をひねるだけで出てくる水や、スイッチを入れれば点灯する電気がどこから来ているのか、自分の街の堤防やダムがどうやって作られているのか、こうした小さな関心や知識を持つ人が増えることが日本の産業、ひいては世界の技術革新の可能性を拓くことにつながるのかもしれません。


まとめ

インフラの整備は国の経済成長に影響を与え、さらにはグローバル社会にもメリットをもたらし、様々な社会問題の解決にもつながります。
私たちが当たり前のものとして利用している水道や電気、道路がいったいどうやって供給されているのか、ちょっと見直してみることでSDGs9の達成に一歩近づくことができるかもしれません。

[参考]
内閣府:
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/shikin.pdf

厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000112577.html

国土交通省:
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001613818.pdf

国際連合広報センター:
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31591/

日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/9-industry/
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/7-energy/

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構:
https://www.nedo.go.jp/content/100953233.pdf

JICA(独立行政法人国際協力機構):
https://www.jica.go.jp/activities/issues/private_sec/__icsFiles/afieldfile/2023/07/19/ninja_strategy.pdf

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