SDGs8 働きがいも経済成長も GDPを上昇させながら、人権問題や格差是正を考える

SDGsの8番目のゴールは「働きがいも経済成長も」という目標になっています。働きがいのある仕事により、人々が経済的に豊かになっていくことを目指すSDGs8では、同時にそれを妨げる人権問題に関しても着目されています。
また、児童労働に関する問題も解決すべき課題としてクローズアップしています。
本コラムでは、SDGs8を取り巻く現状と、達成に向けて私たち個人や企業ができる取り組みについて紹介していきます。

SDGs 8とは?

GDP

SDGs8「働きがいも経済成長も」の正式な表記は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセントワーク)を促進する」です。

簡単に説明すると、経済成長を目指しながら、すべての人が幸せに暮らしていける働きがいのある雇用体系を整えていく、というものです。

SDGs8では、達成に向けて多くのターゲットが設けられています。その冒頭で、各国の状況に応じ1人当たりの経済成長率を持続させ、途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つことを目標として掲げています。

2015年の世界銀行の統計によると、世界人口の約10%にもなる人びとが1日1.9ドル未満という貧困の中での暮らしを余儀なくされています。一方で、アフリカを中心とした途上国では2000年以降、大幅な人口増加が続いています。

人口増加に対応しながら貧困率を下げていくためには、途上国での経済成長は少なくとも年率7%が必要であることから、上記のような目標設定となっています。

この達成のためには、多様化や技術向上、イノベーションなどを通じて高いレベルの経済生産性を達成し、零細および中小企業の設立や成長を奨励することが必要とされています。

また、就労・就学や職業訓練などを行っていない若者の割合を減らす必要があります。そして性別や年齢、障がいを問わず、働きがいのある人間らしい仕事で同一労働同一賃金の正規雇用を増やしていかなければなりません。

途上国では、いまだ残っている強制労働を根絶し、人身売買や児童労働を禁止・撲滅する必要もあります。また、移住労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進していくことも大切です。

これらを実現するためには、2030年までに各国で雇用を創出し、地方の文化振興や地産品の販売につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し、実施する必要があります。

そして、国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々が銀行取引や保険など、金融サービスへアクセスできることが求められています。

人権問題や格差是正を実現していくために

SDGs8を達成するため、世界各国で様々な取り組みが行われています。

アフリカを中心とした途上国には銀行の支店やATMがほとんど存在しない地域があるため、銀行口座を持っていない人たちが多くいます。
そこで普及しつつあるのがモバイル送金サービスです。
これによって銀行口座を持っていなかった貧困層でも金融サービスを利用しやすくなり、出稼ぎ労働者の送金問題の解決にも役立っています。
そのほか、ビジネスを発展させるために無担保で少額の融資を行うマイクロファイナンスなど、金融面からSDGs8を達成するための取り組みが見られるようになりました。

ドイツはヨーロッパ内でも移民の数が最も多い国です。
移民の中にはドイツ語の能力が十分でないため、ディーセントワーク(働きがいがあり、十分な収入が得られる仕事)に就けない労働者も多く存在していました。そこで、国の政策としてドイツ語の言語教育が実施されており、コミュニケーションの問題を解消してディーセントワークに就くことを支援しています。

その一方で、多くの途上国には、児童労働や強制労働といった大きな課題が横たわっています。

ILO(国際労働機関)によると、2020年時点で世界にいる5〜17歳の子どもの10人に1人(約1億6000万人)が児童労働をしているという統計が出ています。その中でも危険有害労働、すなわち健康・安全・道徳を害する可能性が高い仕事に従事する子ども(5〜17歳)の数は7900万人に達しています。

その背景には、親が満足な収入を得られないため、生活していくためにやむを得ず働きに出ているという実状があります。 また、十分に教育を受けずに児童労働をしているため、大人になっても貧しさから抜け出せなくなるといった悪循環も発生しています。

教育機会が得られないと、安定した収入や、やりがいのある職業へ就くために必要な知識をつけることができないので、負のスパイラルから抜け出せなくなってしまうのです。このような悪循環から抜け出すためには、とにかく子どもたちに学校教育を受けさせる必要があります。十分な教育を受けるということが、ディーセントワークに就くことにつながっていくのです。

SDGs8達成のためにできることとは?

SDGs8の課題を解決する手段として、ソーシャルビジネスが注目されています。一般的にビジネスの事業目的は「利益の追求」ですが、ソーシャルビジネスは「社会問題の解決」を主眼とした事業目的であるという違いがあります。

社会問題解決を目指したソーシャルビジネスとして、もっともわかりやすいのがフェアトレードです。
フェアトレードにより公平・公正な貿易を行うことで、途上国の生産者や労働者に対して正当な対価が支払われるようになるので、働きがいとともに経済成長をもたらすのです。

そこで私たちにできることの一つとして、商品を購入する際にフェアトレードの商品を選ぶことがあげられます。フェアトレードの商品を選ぶことは、児童労働や強制労働に加担せずに商品を製造・生産している企業を支援することになります。

また、投資家が社会的課題の解決に取り組む企業に投資をすることは「社会的インパクト投資」と呼ばれ、賞賛されています。ソーシャルビジネスに取り組む企業に投資することで、SDGsに配慮した投資を行うことができます。

普段の仕事の中で、ディーセントワークの実現に取り組むことも、私たちにできることの1つです。無駄な会議や業務を減らし、ワークライフバランスを向上させることや、自分自身のスキルアップやリスキリングに取り組むことも大切です。

このように、政策レベルでの取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの意識改革や成長も、SDGs8の解決へとつながっていくのです。


まとめ

SDGs8「働きがいも経済成長も」を達成するためには、世界の児童労働や強制労働を無くす必要があります。そのためには、子どもたちへの学校教育が重要です。
また、ソーシャルビジネスの支援や私たちの働き方に対する意識改革も大切です。
フェアトレードを意識した消費や、社会貢献を考えた企業の製品やサービスを購入するなど、ソーシャルグッドな企業を応援することが、よりよい未来につながるかもしれません。





[参考]
外務省:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal8.html

日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/8-economic_growth/

JETRO(日本貿易振興機構):
https://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Theme/Eco/Microfinance/200608_kono.html

ILO(国際労働機関):
https://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_799819/lang--ja/index.htm
https://www.ilo.org/tokyo/newsroom/WCMS_853810/lang--ja/index.htm

一般財団法人 国際開発センター:
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL8.pdf

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