身近なSDGs! フードロス削減のための規格外や訳あり品、そもそも食品の規格ってなに?

2023.10.2

大きく曲がったキュウリや無選別のお煎餅など、「訳あり品」をスーパーや直売所などで見かけることがあります。そもそも、食品の規格とはいったい何のためにあるのでしょうか? 今回は、食品の規格によるメリットとデメリット、そして生産者などの利益を守りながら食品廃棄を減らす取り組みについてご紹介します。

農産物の規格は何のため? ささいな傷で規格外や訳あり品に

私たちが口に入れる食品には、多くの規格が定められています。食品の安全性に関係する「JFS規格」や「ISO22000」のほかにも、農産物に関しては大きさや形などの出荷規格があります。昭和40年代は国によって標準規格が定められていましたが、現在は自治体や生産者団体などが独自にランク分けした自主規格が設定されています。

例えばある県のキュウリの出荷規格では、曲がりの程度が「2cm以内」はAランク、「4cm以内」はBランク、長さが「23cm〜25cm」で重さが「120g~140g」ならMサイズ、「21cm〜23cm」で重さが「100g〜120g」はSサイズと定められています。
このように、農産物によってはさらに細かく設定されているものもあり、最近では果物や野菜の「糖度」など、新しい規格も登場しました。

こうした出荷規格は、農産物のスムーズな流通に役立っています。
形が揃っていれば同じ段ボールに無駄なく箱詰めして運搬できますし、皮をむいたり切ったりする加工の効率化にもつながります。

さらには産地間競争で優位に立つように、より形の揃った美しい農産物が追求され、同じ農産物間での差別化が進められてきました。
出荷基準を定めることは供給量を調整し、価格の下落を防ぐことで農家を保護する役割もあるのです。

しかし、規格が細分化・厳格化するにつれ、当然規格に合わないものが出てきます。わずかな傷や、ほんの少し大きかったり小さかったりするだけで「規格外」となる農産物はどうなるのでしょうか?

生産量の2割がフードロス!? 食品の規格が招くデメリットとは

細分化・厳格化されている農産物規格は、生産者を守る一方で負担を大きくしています。
前述のキュウリの場合、キュウリをまっすぐに育てるためにはまんべんなく日光を当て、こまめに葉を取り除くなど丁寧な管理が必要で、規格が細分化されるとそのぶん手間がかかり、そのための設備や労働力が必要になります。こうした作業は、人手不足に悩む農家にとって、大きな負担となっているのです。

ほかにも、規格外と判断された農産物は市場から除外されてしまうため、農家にとって経済的なダメージとなります。規格外農産物の多くはそのまま出荷することができないので、これまで加工用として安く売られたり、廃棄されていました。実際にどれほどの農産物が規格外として廃棄されているのか正確な統計は出されていませんが、総生産数の約2割といわれています。

世界では7億人以上が飢餓状態にありながら、一方では丹精込めて作った野菜を「見た目」が原因で廃棄するという「見えない食品ロス」を発生させていることが問題となっています。
廃棄には、運搬や焼却、埋め立てといった処理のため環境負荷がかかり、環境問題にも関わっているため、この見えない食品ロスはSDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」とも関連しています。そのため、食品の表示や規格の見直しが進められています。
また、「見えない食品ロス」を最小限にする技術として、ドローンやAIといったテクノロジーを使い、生産者の負担を軽減しながら規格外の農産物を減らすシステムの開発など、テクノロジーの面からも対策が進められています。
規格外農産物の廃棄を減らすことは、今、世界中が注目する、持続可能な生産と消費を目指すゴール12の達成にも貢献することになるのです。


フードロスを減らそう! 規格外・訳あり食品再生の方法

規格外農産物の廃棄を減らすために、新しい取り組みも登場しています。
これまでの規格外農産物は、主にカット野菜やジュース、スイーツなどに加工されていましたが、最近では新しい加工方法や食品以外でも活用されるようになりました。

例えば、規格外の野菜をシート状やフレーク状にして、長期保存が効くように加工された製品が販売されています。野菜シートは海苔のように気軽に使うことができますし、野菜フレークは離乳食などに使えるため、忙しい子育て世代などから支持されています。
さらに、収穫時に捨てられる外葉などを使った口に入れても安全なクレヨンや、廃棄野菜から天然染料を抽出して染色したアパレル製品など、まったく新しい分野での再活用も始まっています。

「見た目が少々悪いだけで、味に変わりはない」ということが周知されるにつれ、規格外農産物の人気も高まっています。
スーパーなどで不揃いな農産物を「訳あり品」として目にすることが増えましたし、直売所ではユニークなネーミングで大ヒットする規格外野菜も登場しています。
また、インターネットでは「訳あり品」を専門に取り扱うショップもたくさん登場するなど、消費者が納得した上で購入できる選択肢は増えています。野菜だけでなく肉や魚、スイーツの端材部位などを気軽に購入し、楽しむことができるのです。

私たちは、こうした規格外農産物を使ったプロジェクトを支持したり、見た目にこだわらずに購入することで、生産者を応援することができます。
もちろん購入した食品は賢く活用しながら廃棄物を減らし、どうしても消費できない場合にはフードバンクに寄付するなど、エシカルな消費を心掛けてSDGsの目標達成にも貢献してみませんか?



まとめ

生産者を保護し、品質の良い食品を消費者に届けることを目指した食品の規格が、時に生産者の負担を増やし、食品ロスへとつながっています。食品ロスの解消は、飢餓の解消や環境への貢献、そして生産者を守ることにも寄与しています。
「見えない食品ロス」を減らすべく、様々な変革が進む中で、私たち一般消費者は生産される食品が廃棄されているという現実にもっと目を向け、より賢い購入と消費を心掛けたいものです。

[参考]
農林水産省:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-3.pdf
https://www.maff.go.jp/kanto/syo_an/seikatsu/iken/attach/pdf/R3ikenkoukan-2.pdf
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kakou/yasai_kazitu/attach/pdf/index-13.pdf

厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/shokuhin_kikaku/index.html

山梨ガイド:
https://yamanashi-guide.com/kikakugai-yasai/

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