子ども食堂から男性へのHPVワクチン助成まで アクティビストの活動とソーシャルグッドとは

2023.10.31

SDGsの認知拡大により、社会に良いインパクトを与える「ソーシャルグッド」という概念が知られるようになりました。多くのソーシャルグッドを支え、後押ししているのは、さまざまなアクティビストたちです。彼らの行動がソーシャルグッドな仕組みを作り出し、自治体や企業を巻き込んで社会を変えようとしています。アクティビストの重要性と、私たちが今すぐ行えるソーシャルグッドな取り組みについて解説します。

SDGs採択で注目! ソーシャルグッドの意義とメリット

ソーシャルグッド(Social Good)とは、地域や社会環境に良い影響・インパクトを与える商品やサービス、または意識や行動を指す言葉です。ソーシャルグッドという言葉自体は2010年ごろに登場しましたが、もちろんこうした意識は今に始まったものではありません。昔から、自分の利益や便利さだけを求めず、他の人のために行動する人はいましたし、儲けだけでなく世の中のためになるサービスを大切にする企業もたくさんありました。ではなぜ今、ソーシャルグッドが注目されているのでしょうか?

その背景として、2015年の国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことが挙げられます。SDGsでは環境問題や貧困、差別などの社会的課題を解消し、持続可能な社会を目指しています。こうしたSDGsの価値観が浸透するにつれ、己の利益を追求するだけでなく、地域や社会に良い影響を与える、つまりサステナビリティを追求する取り組みがフォーカスされるようになったのは自然な流れといえるでしょう。

また、ソーシャルグッドな製品や活動は、企業にとって経営的にもプラスとなり得ることが知られるようになりました。ソーシャルグッドに取り組む企業は消費者や投資家に良い印象を与え、企業価値が向上したり、知見や視野が広がることで新しいビジネスへの道を拓くチャンスにもつながります。



子ども食堂にHPVワクチンまで…ソーシャルグッドを支えるアクティビスト

こうしたソーシャルグッドを後押しするパワーとして、アクティビストの存在は欠かすことができません。アクティビスト(Activist)は、直訳すると「活動する人」で、一般的に、社会をよくするために活動する人を指します。

海外では寄付やボランティアを始めとした社会貢献活動や慈善活動が定着しており、市民が積極的にボランティア活動を行っています。そのため、社会活動をするアクティビストは「エンジニア」や「弁護士」等と並び一般的な肩書として使われています。

一方日本では、慈善活動などが身近なものとして定着しておらず、アクティビストという言葉もそう広く浸透してはいません。日本でアクティビストというと、「社会活動家」よりも、積極的に経営に介入する投資家、いわゆる「物言う株主」を指すことが多いかもしれません。

しかし近年、日本でも、社会活動をおこなうアクティビストが少しずつ注目されつつあります。自治体等と連携して全国約7,300か所以上にまで拡大した子ども食堂の運営は、アクティビストの働きに支えられ、広がりを見せました。また、Z世代の環境活動家が開発したオーガニック口紅はクラウドファンディングで1,000万円以上を集め話題となりました。

もちろん「アクティビスト」という肩書がなくても、社会のためにアクションを起こすことは誰にとっても可能です。前述の子ども食堂ができたきっかけは、ある八百屋さんが近所のお腹を空かせている子どものために店の一角に食事ができるスペースを作ったことでした。
最近では男性のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの定期接種助成を訴え、ある大学のグループ がオンラインで1万5000人の署名を集めて厚生労働省に提出し、話題になりました。現在では、男性へのHPVワクチンの助成を独自に開始した自治体も増えています。
小さなソーシャルグッドが自治体や企業を動かし、社会の流れを変えるきっかけのひとつになるかもしれないのです。


ひとつのアクションが社会を変える――今日からできるソーシャルグッド

13歳から29歳までの男女を対象にした内閣府の調査によると、「子供や若者が対象の政策や制度は対象者に意見を聴くようにすべき(約70%)」と思っていても、自分が参加することで「変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」との問いに「そう思わない・どちらかと言えばそう思う・わからない」と答えた人は約68%にも上っています。また、ボランティア活動の経験があるほど、社会参加への意識が高くなっていますが、ボランティアへの興味がある人の割合は約33%と諸外国と比べて低く、興味がない人の割合は約48%と諸外国と比べて高い結果となっています。政策や制度への思いとは裏腹に、政治参加やソーシャルグッドへのハードルが高いことがうかがえます。

しかし本来、身近な地域や社会のために小さな行動を起こすことは、それほど大それたことではありません。アクティビストでなくても社会のために気軽に行えるソーシャルグッド活動はたくさんあります。たとえば最近では「住民の声を聞く」ことに力を入れている自治体が増えてきました。国や自治体が行うパブリックコメント(意見公募)や、ショッピングモールなどで住民の意見を聞くために行われるオープンハウス(パネル展示型説明会)、SNSなどの仕組みを利用することで自身の声を届けたり、ときには自治体に問題提起をすることも、立派なソーシャルグッドだといえます。

さらに「人や環境にやさしい製品を購入する」「節電につとめる」「フードロスを減らす」といった行動や、「地域の清掃活動に参加する」「近所のお年寄りやひとり親家庭の子どもたちに声をかける」など、地域での行動や取り組みも、とても身近なソーシャルグッドです。
こうした一人ひとりの小さな行動の積み重ねが社会を変えるきっかけになるかもしれません。



まとめ

ソーシャルグッドを牽引し、社会が変化するきっかけを作るアクティビストは少しずつ日本でも注目されるようになっています。また、アクティビストとして注目されることはなくても、それぞれが行うささやかなソーシャルグッドが地域の改善に役立つこともあるでしょう。
自分の周囲の人のために「今なにかできることはないか?」、そう考えるところからソーシャルグッドは始まります。

[参考]
内閣府:
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/s0_1.html

NHK:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230927/k10014208371000.html
https://www.nhk.or.jp/minplus/0119/topic025.html

読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221009-OYT1T50155/

朝日新聞デジタル:
https://www.asahi.com/sdgs/article/15005481

NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ
https://musubie.org/news/6264/

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