ジェンダーギャップ指数とはなにか? ジェンダー平等を指標で推し量る試み

SDGsの目標5では「ジェンダー平等の実現」を掲げています。しかし日本は男女間の格差が大きく、ジェンダー平等の国とは言い難い状況です。 そこで、今回はジェンダー平等を推し量る指標である「ジェンダーギャップ指数」に注目しました。日本のジェンダーギャップ指数は、世界の中でどの位置にあるのでしょうか?
さらにジェンダー平等を実現するため、私たちに求められていることを考えます。

日本のジェンダーギャップ指数順位は世界で116位

「ジェンダーギャップ指数」とは各国における男女格差を数値化したもので、2006年から世界経済フォーラムによって公表されています。基準となるのは以下の4つの分野で、これらを“0が完全不平等”“1が完全平等”としてスコア化しています。

・教育(識字率、初等〜高等学校就学率の男女比)
・健康(出生時、健康寿命の男女比)
・政治(国会議員、閣僚、国家元首在任年数の男女比)
・経済(労働参加率、同一労働における賃金、管理職や専門職の男女比)

さて日本の順位はというと、2022年の最新調査では146カ国中116位という低成績でした(前年は156カ国中120位)。先進7カ国(G7)の中では、ドイツが10位、フランス15位、イギリス22位、カナダ25位、アメリカ27位、イタリア63位となっており、日本は最下位です。ちなみに同じアジア諸国である韓国は99位、中国は102位でした。

日本のスコアをもう少し詳しく見てみましょう。下のグラフを見ると、日本の「教育」のスコアは満点で146カ国中1位、「健康」も0.973でこちらは63位です。しかし「経済」は0.564で121位、「政治」に至っては0.061で139位と、低い順位となっています。

実際、日本の企業における女性管理職、また女性の国会議員や閣僚は衆議院で1割、参議院で2割程度であり、女性首相はこれまで1人も誕生していません。

教育や健康の分野での男女格差はないのに、経済・政治において格差が目立つということは、社会全体の理解や仕組みがまだ十分ではないのが現状です。配置や処遇などの雇用管理の格差や賃金などによる経済的な格差が改善されないと人材の活躍が促進されないため、企業や社会全体にとっても大きな損失となるのです。
ではこのギャップをなくすために、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

ジェンダーギャップをなくすために

特徴を考慮した上で、妊娠中や出産後の働きやすい環境づくりは欠かせません。そのために必要なのがワークライフ・バランスの推進です。リモートワークなど多様な雇用形態の導入や、産休や育児休暇を取りやすくして、「家庭か仕事か」ではなく、「家庭と仕事を両立できる」仕組みが必要です。
これは女性に限ったことではありません。厚生労働省による育児休暇取得率を見ると、女性の取得率が85%だったのに対し、男性の取得率は14%弱です。男性が積極的に育児や家事を分担する雰囲気づくりも求められます。



また、日本では出産後に働こうとすると非正規雇用になるケースが多いため、同一労働同一賃金の実現も急務です。ジェンダーギャップ指数13回連続1位のアイスランドでは、従業員25名以上の会社には男女の賃金が同じであることの証明書が義務付けられており、違反すると高額の罰金が科せられます。日本でも大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から同一労働同一賃金が導入されましたが、浸透にはまだまだ時間がかかるとみられています。さらに女性のキャリアアップ支援も欠かせません。

日本でも、ジェンダーギャップをなくす取り組みを積極的に行っている企業があります。例えばインターネット関連サービスを扱う大手企業では、フレックスタイム制や時短勤務など柔軟な勤務体制を整え、休職前や復職前にセミナーなどを実施しています。また、オフィス内に搾乳室や託児所も設置し、子育て中でも安心して働ける環境を整えています。その結果、同社の復職率は95%、管理職の女性比率は28%を突破しています。SDGsが注目を集めるなか、「男女平等の実現」を目指す企業は優秀な人材を失わずにすむだけでなく、社会からの信頼というプライスレスな「利益」も得られるのです。




ジェンダー平等のための政府の取り組み

日本政府もジェンダー平等へ向けた取り組みを推し進めています。2016年には「女性活躍推進法」により、男女の賃金格差の情報開示が義務付けられました。2018年からは待機児童を減らすための取り組みが本格化。2021年度からは「新子育て安心プラン」によりさらに大きな受け皿が整えられ、自治体への支援や保育士の確保なども始まりました。「産後パパ育休(出生時育児休業)」などにより、男性の育児休業は取得しやすくなりつつありますし、「女性応援ポータルサイト」では女性参画のサポートを行っています。

2022年の「女性版骨太の方針」では、「女性の経済的自立」「女性の登用目標達成」を重点的に取り組むとの表明があり、この年の参議院選挙では女性議員の当選者数が過去最高となりました。選挙の立候補者を男女半々にする「クオータ制」の法律化も議論されています。日本のジェンダーギャップ指数はまだまだ低いとはいえ、さまざまな努力が続けられています。

ただこうした取り組みが本当に成果を上げるためには、私たち一人ひとりの意識改革が必要です。「男性は外で働き、女性は家庭を守る」「それが当たり前」、あるいは「仕方ない」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)や、心の壁を持っていないか。自分の価値観を見つめ直すことが、すべての人に求められています。

まとめ

日本のジェンダーギャップ指数は世界から見ると低いものの、ジェンダーギャップを埋めるための取り組みは進んでいます。私たちが古い固定観念から自由になり、すべての人が自分の力を最大限に発揮できる社会が期待されます。

[参考]
内閣府男女共同参画局:
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202208/202208_07.html
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/gaiyou/pdf/r02_gaiyou.pdf
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/ouen/

厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000840529.pdf

朝日新聞デジタル:
https://www.asahi.com/sdgs/article/14668906

日本経済新聞:
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA061VM0W2A700C2000000/

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