再生可能エネルギーの未来、化石燃料からの脱却と代替エネルギー

2023.10.2

二酸化炭素や放射性廃棄物を出さない、化石燃料に代わる再生可能エネルギーですが、大災害や地球温暖化が続く中でますますその重要性が注目されています。しかしながら、再生可能エネルギーをさらに普及させるためには、まだまだ乗り越えなければならない課題が残されています。
今回は、再生可能エネルギーの定義と重要性について解説し、そして導入推進に必要な対策についても紹介します。

再生可能エネルギーの定義と必要性

「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(略称:エネルギー供給構造高度化法)」において、再生可能エネルギーは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」と定義されています。つまり、使うとなくなる石油や石炭、天然ガスなどとは異なり、枯渇のおそれが少なく、環境への負荷が少ないエネルギーのことです。具体的に、再生可能エネルギーに含まれるものとして、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「太陽熱」「大気中の熱その他の自然界に存する熱」「バイオマス」の7種類が定められています。

再生可能エネルギーは「枯渇しない」だけでなく、「温室効果ガスを排出しない」「資源が偏在しない」ため各地で調達できるなど、多くのメリットがあります。
地下資源の少ない日本はもちろん、世界にとっても、再生可能エネルギーの導入は必要不可欠であるといえるでしょう。

再生可能エネルギーと似たワードとして「自然エネルギー」がありますが、自然エネルギーは自然現象を利用するエネルギーなので、厳密にはバイオマスや大気中の熱その他の自然界に存在する熱のなかで、ヒートポンプなど温度差を利用したエネルギーは含みません。

また「新エネルギー」は「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(略称:新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法新エネ法)」で特に普及を推進しているエネルギーで、バイオマス、太陽光や中規模水力発電などを含むエネルギー源が指定されています。

「代替エネルギー」とは化石燃料や原子力に代わるエネルギーという意味で、再生可能エネルギーとほぼ同義の言葉として使われる言葉です。

化石燃料に代わる? 世界や日本における再生可能エネルギー導入の現状

現在、世界での再生可能エネルギーの普及率はどの程度高まっているのでしょうか?
資源エネルギー庁の再生可能エネルギー発電比率の国際比較に関する資料によると、カナダでは67.2%、スペインは46.3%、イタリアは40.3%に到達しており、また、アイスランドではほぼ100%を達成しているといわれています。
このほかにもアメリカ・ハワイやオーストラリア・シドニーなど、再生可能エネルギー100%を目指す都市も増えています。

一方、2021年度の日本の再生可能エネルギーの電力構成比は20.3%(太陽光8.3%、水力7.5%、バイオマス3.2%他)で、東日本大震災後の2011年度の10.4%と比較すると、10年間で2倍近くに増加しました。
さらに、日本政府は2030年までに再エネ比率36〜38%を目指しており、今後も再生可能エネルギー普及へのさらなる努力が求められています。

これらの目標は、国によって自然環境や産業が異なるため単純比較はできませんが、世界規模での努力はこれからも求められ続けていくことでしょう。

民間企業でも再生可能エネルギー100%を目指す取り組みが始まっています。
世界的な大手企業のなかには、脱炭素化を迅速に進めるべく、サプライチェーンの各社と協力して取り組んでいる企業もあります。日本でも自社の使用電力を100%再エネで賄うことを目標とする「RE100」プロジェクトへの参加企業が増えています。こうした動きは中小企業や投資家にも影響を与えるとみられています。



再生可能エネルギーをもっと普及させるには? 普及への課題と対策

一方で、再生可能エネルギーは発電コストが高額で、安定した電力供給や効率的な調整が困難などの課題もあります。
最後に、再生可能エネルギー普及への国や企業による対策をご紹介します。

そのひとつが2012年にスタートした「固定価格買取制度(FIT制度)」です。これは再生可能エネルギーによって発電された電気を、電気事業者に一定期間、固定価格で買い取ってもらえるという制度で、日本の再生可能エネルギー普及を大きく後押ししました(現在は時期や時間帯により価格が変動するFIP制度に移行しています)。

再生可能エネルギー導入の支援制度には、税制優遇措置も含まれます。一定の条件を満たすことが必要ですが、再生可能エネルギー発電設備を設置すると固定資産税の軽減や所得税の控除を受けることができます。

技術面ではAIの活用が期待されています。電力需要や発電量を予測した電力需給をAIが制御して行ったり、仮想空間に現実の空間を再現し、建物内の設備や空調、太陽光発電といった設備を作り込むことで複雑な条件を考慮した、より最適な電力需給計画を作成するシステムや、余剰電力を適切に分配するシステムがすでに国内で運用され、安定的な電力調整に一役買っています。
このような政策と技術、両面での対策がさらに進むことで、2030年の「再エネ比率36〜38%」に近づけるかもしれません。

工場やオフィスなどの企業や家庭で消費される電力は、「最終エネルギー消費」と呼ばれます。この最終エネルギー消費において、家庭部門は15.8%の比率を占めています。
私たちは、家庭の電力プランの見直しや、節電によって消費電力そのものを減らすなどの行動から再生可能エネルギー普及に貢献することができます。

まとめ

再生可能エネルギーは、持続可能な社会に欠かせないエネルギーです。
自分はどんな電気を、いつ、どのように使っているのか――。日々の生活をもう一度見直すことは、安定した再生可能エネルギー運用にもつながります。化石燃料に大きく依存している今の社会からシフトするためには、私たち一人ひとりの意識の変革が欠かせません。


[参考]
経済産業省:
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/052_01_00.pdf
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/040_01_00.pdf
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/fip.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/support/business2.html
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/2-1-2.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/

環境省:
https://www.env.go.jp/earth/re100.html
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_syousai_20230110.pdf

国立研究開発法人 国立環境研究所:
https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=29720

関西電力:
https://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/new_energy/9098953_10603.html

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