SDGs1 貧困をなくそう 誰一人取り残さない世界とは

世界では3億5600万人の子どもたちが極度に貧しい生活を強いられています。そして日本でも、7人に1人の子どもが貧困状態であるといわれています。
貧困はすべての問題の根源であると考えられていて、SDGsの最初に設定されている目標です。
世界や日本の貧困の現状を知り、誰一人取り残さないために今日から私たちができることを考えます。
※2021年2月時点の国際貧困ライン

SDGsのゴール1とは?

漠然とした「貧困」という言葉に、基準や定義があることをご存知でしょうか。
そのひとつが「絶対的貧困」です。「絶対的貧困」とは、生きていけるギリギリの衣食住もままならない状態のことで、世界銀行が設定しているこの基準を「国際貧困ライン」といい、現在は1日2.15ドル(約305円)以下での暮らしを指します。一方、国ごとの生活水準を考慮して定義されるのが「相対的貧困」で、これはその国の世帯収入から計算されます。日本の相対的貧困ラインは127万円/年で、このラインに満たない人が日本には15%以上います。

SDGsのゴール1「貧困をなくそう」では、人の命と人権を守るために絶対的貧困・相対的貧困の両方をなくすことを目指しており、2030年を目標として7つのターゲットを設定しています。
これは、2030年までに「極度の貧困」をなくし「あらゆる貧困状態」を半分にし、そしてすべての人が基礎的サービスを利用できることを達成目標にしており、社会や企業は、貧しい生活をする人々が貧困から抜け出せる政策やしくみに取り組むよう求められています。

貧困はなぜ「すべての問題の根源」なのか

絶対的貧困にせよ、相対的貧困にせよ、貧困は多くの弊害をもたらします。

栄養不足と健康リスク:貧困のために十分な栄養を摂ることができない赤ちゃんや子どもは、病気にかかりやすくなったり、命を落とすリスクが高まります。適切な栄養を得ることは、身体的・知的な発達に不可欠です。

教育の制約:貧困のために学校に行けない子どもは、十分な教育を受ける機会を奪われます。教育の制約は、将来の職業選択の幅を狭めるばかりでなく、貧困の連鎖を引き起こす可能性もあります。

環境への負荷:貧困のために多くの国では、安価ながら環境に有害なエネルギー源を使用せざるを得ません。これによって、気候変動や食糧不足などの環境問題が悪化します。貧困層は、環境問題の影響をより強く受ける傾向があります。

社会的・経済的影響:貧困は産業や経済活動の停滞を招き、政情不安や難民問題、さらには紛争や戦争といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。貧困層の経済的な困難は、社会全体の安定や発展にも影響を及ぼします。

このように、貧困はあらゆる問題の原因になります。
さらに、いったん貧困状態に陥るとそこから抜け出すことはとても困難です。
貧困のために良い教育が受けられず、不安定な職業に就いた親から生まれた子どもたちの多くはまた同じ貧困を経験します。
この貧困の連鎖は大きな問題となっており、貧困の悪循環を断ち切るために教育の支援や取り組みが行われています。



日本でも、ひとり親家庭の半分以上が、子どもの7人に1人が貧困状態にあります。
貧困は人ごとではありません。親の離婚やリストラや自分や家族の病気や介護、また突然の災害や事故などで、いつ私たち自身が貧困を経験するかわかりません。
貧困は誰にとっても、無関係ではいられない問題なのです。

誰一人取り残さない世界へ向けた取り組み

この貧困という大きな問題を解決し、誰一人取り残さない世界を実現するためには何が必要でしょうか?
その取り組みのひとつが、貧困層向けの金融機関「マイクロファイナンス機関」です。
これは貧しい人に無担保で小額の融資を行い、自立を助けようという仕組みで、1980年代から世界中に広がりました。

貧困による教育格差に関しては、NGOなどが率先して無料の学習塾や学習ボランティアを行っています。これらの教育支援では、大学生ボランティアが定期的に学習相談に乗る活動のほか、教育目的で使えるクーポン、いわゆる「教育バウチャー」を配布している自治体もあります。教育バウチャーでは英会話やピアノといった文化的な教育まで対象とされるなどその範囲は広がっています。さらに「こども食堂」やフードバンクなどの取り組みも行われています。

多くの企業も貧困解決に向けて、様々な取り組みを行っています。
開発途上国へ文房具や衣類の寄付や、積極的にフェアトレード製品を取り扱うなど、社会的なアクションのスポンサーになる企業もあります。

私たち個人も募金やボランティアに協力することで、ゴール1達成に貢献できます。
買い物をする時にフェアトレード商品を選んで購入するのも、手軽にできる取り組みの一つです。 フェアトレード商品は労働環境や価格が公平・公正であることが認証されており、商品を購入することが生産国の労働者収入を改善する助けになります。
一人ひとりが貧困を身近な問題として意識し続けることが、ゴール1達成への大きな一歩となるでしょう。




まとめ

日本にいると「ピンとこない」と感じる人も多い貧困問題ですが、もしかすると私たちのすぐ近くでも助けを必要としている人がいるかもしれません。
たとえ小さなサポートでも、自分にできる方法で手を差し伸べることで、誰一人取り残さない世界に少しずつ近づけていくことができます。

[参考]
内閣府:
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/ouen-forum/r01/pdf/tottori/naikakufu.pdf

厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf

日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/1-poverty/

日本財団:
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/86934/childcare

Chance for Children:
https://cfc.or.jp/

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