文部科学省では2020年3月に新学習指導要領が公示され、小学校で2020年度から、中学校で2021年度から、高等学校で2022年度から実施されています。
学習指導要領の改訂により、子どもたちの学びはどう変わったのでしょうか?
学習指導要領改訂の背景
文部科学省では全国のどこの学校でも一定の教育水準を保つことができるよう、学習指導要領を定めています。その指導要領はおおむね10年に1度改定されているのですが、2008年の改訂に続いて2020年度に改訂が行われました。
現代の子どもたちには、インターネットやAIの普及により、社会や生活が大きく変わっている時代の変化を前向きに受け止め、人生をより豊かにしていくために主体的に考える力が求められています。
この時代、子どもたちが「生きる力」を身につけるためにはこれまでと異なる新しい教育が必要であることから、学校での学びが見直されたのです。
新学習指導要領では、変化が激しく先が見えない現代社会を生き抜きながら自分の道を切り拓いていくための教育を目指しています。
「生きる力」の定義とは?
文部科学省では、知・徳・体のバランスのとれた力を総称して「生きる力」と呼んでおり、2008年の改訂の際、小・中学校の学習指導要領の理念として掲げられたものです。子供たちに「生きる力」を育む、という理念は、新学習指導要領にも継承されています。
あまり聞いたことがない、「知・徳・体」とはどのようなものでしょうか。
知
・実際の社会や生活で生きて働いていく確かな知識や技能のこと。
・自分で判断をしながら行動できる能力のこと。
徳
・自分自身を戒めながら、他者と協調性を持って行動する力のこと。
・思いやりの心や感動する心などの豊かな人間性のこと。
体
・たくましく生きていくために健康で過ごす力や体力のこと。
上記の3つの柱をベースに、これからの時代を生きていくための能力や資質を身につけていくカリキュラムが新学習指導要領だといえます。
学校教育はどう変化している?
新学習指導要領では、具体的に何が変わったのでしょうか?
学習手法としては、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点から、「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」も重視した授業に改善されました。
科目としては新しく「プログラミング教育」「外国語教育」が加わりました。プログラミングはこれまで、大学や専門学校などの課程にならないと学ばないものでしたが、理数教育を充実していくために基礎的なプログラミング教育を小学校から必修化しています。
また、グローバル化している社会に対応できるよう、小学校3〜4年生で「外国語活動」が必修化され、小学校5〜6年生で「外国語」の授業が教科として入るようになりました。
そのほか、国際社会で活躍できる人材の育成を図るために、自分が住んでいる日本や郷土の伝統や文化についての理解を深め、その素晴らしさを継承・発展させるための教育の充実も掲げられています。
学校だけでなく家庭や地域でも連携を
「生きる力」を育むためには、学校だけでなく家庭・地域が相互に連携しつつ、社会全体で取り組むことが不可欠であるとしています。
そこで、学校は家庭や地域に対して自らの教育活動の目標や現状などを積極的に情報提供し、家庭や地域の連携・協力を求めていくとしています。
家庭に期待されることとして、保護者からの働きかけがあります。学校での学びを日常生活で活用したり、家庭での経験を学校生活に生かしたりすることが大切と考え、子どもが学校で学んだことについて家庭で話すことを推奨しています。
たとえば、ある調査では、保護者が子どもに対して下記のような働きかけをしている家庭では、子どもの学力が高くなる傾向があるという結果がでています。
●学校や友達のこと、地域や社会の出来事など、家庭での会話が多い。
●テレビ・DVDを見る時間や、テレビゲームをする時間などのルールを決めている。
●子どもに本や新聞を読むようにすすめている。
●子どもに最後までやり抜くことの大切さを伝えている。
●自分の考えをしっかり伝えられるようになることを重視している。
●地域や社会に貢献するなど、人の役に立つ人間になることを重視している。
(文部科学省委託研究「平成29年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)より)
また、地域に期待されることは、学校とのパートナーシップによる教育・活動の充実です。例えば、子供たちが地域に出て行って郷土学習を行ったり、地域住民と共に地域課題を解決したり、地域の行事に参画して共に地域づくりに関わるといった活動が挙げられます。
このような取り組みによる地域の教育力の再生・充実は、地域課題解決等に向けた連携・協働につながり、持続可能な地域社会の源となります。
まとめ
新学習指導要領には、”これからの社会が、どんなに変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい”という子どもたちへの想いが込められています。
未来の社会をつくっていく子どもたちが、のびのびと柔軟に成長していけるよう、社会全体で支え、見守っていきたいですね。
[参考]
政府広報オンライン:
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201903/2.html
文部科学省:
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/044/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/07/09/1405957_003.pdf
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/02/14/1413516_001_1.pdf
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/130/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/06/27/1405482_9_2.pdf