MDGsからSDGsへ。人権とSDGsの歴史から考える、人権教育

2023.12.1

人権教育というと人権標語や人権作文の宿題を思い出す人もいるかもしれませんが、近年はより行動的で幅広い学びが重視されています。SDGsが人権にフォーカスしていることから、SDGsの視点を取り入れた新しい人権教育を世界共通の認識として広げる動きが見られます。
これまでの人権の歴史をおさらいしながら、なぜ一人ひとりが人権や人権問題を「自分ごと」としてとらえなければならないのかを考えていきます。

自分と他の人。ヒトの大切さを認めるには? 人権の定義と人権教育の目的

法務省では「人権」を「人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」だと定義しています。単に命を繋ぐだけでなく、自分の尊厳が守られ、自由に幸福を追求できてこそ「人権が尊重されている」状態であるといえます。人権は、すべての人間が生まれながらに持っている大切な「権利」です。すべての国の政治は国民の人権を守ることを基本とし、また、そうであるべきとされています。
当然のことながら、生まれたばかりの赤ちゃんには人権の概念はありません。「人権」イコール「すべての人が人権を尊重されるべき」という認識は、成長していく中で安心・安全な場所で生活し、自分を守るための欲求が満たされて、はじめて獲得できるものです。この成長過程において偏見やバイアスがかかることもあるため、必要となるのが人権教育です。

人権教育の目標について、文部科学省は「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること」としています。そのためには他の人の考えや気持ちを想像し、共感的に理解する力が必要です。また、自分の気持ちを適切に表現するコミュニケーション力や、お互いの要求を共に満たせるような問題解決力を養うことも大切です。
自分と同じように他者を大切にし、認め合うことは、年を重ねた大人でもなかなかむずかしいからこそ、幼いころから人権について学び、このような力を育てることが重要なのです。

話題のSDGsも人権尊重が基盤に。人権尊重は前身のMDGsから!?

今では当たり前のものだと考えられている人権ですが、「人権」は長い時間をかけて私たちが獲得してきたものです。人権には生まれによる差別をなくそうという「平等権」と心身・経済的自由を守ろうとする「自由権」、そして人間らしい生活をするための「社会権」という3つの権利が含まれており、これらをまとめて「基本的人権」を呼びます。

今から800年以上前の1215年、イングランドで王権を制限する「マグナ・カルタ」という大憲章が成立し、その後の思想に大きな影響を与えました。マグナ・カルタはイギリス憲法の土台となり、アメリカの独立宣言や「人は生まれながらに自由で、法の前で平等」と謳うフランスの人権宣言などの「自由権」や「平等権」につながります。さらに1919年、ワイマール憲法では「社会権」が初めて保障されました。以降、1940年代に「国連憲章」や「世界人権宣言」が国連で採択され、人権は国際的に連携をし、保護・実現されるものと認められるようになりました。

話題のSDGsも人権と深い関わりがあります。SDGsには貧困や飢餓を終わらせ、健康的な生活を確保することや、ジェンダー平等、教育や雇用の機会の保障などが盛り込まれていますが、ベースはすべての人が幸福に生きることであり、人権擁護です。これらの概念はSDGsの前身であるMDGsから変わっていません。開発途上国の問題にフォーカスしたMDGsは、よりターゲットを明確にしたSDGsへとバトンを渡しましたが、人権を尊重するというベースはそのまま引き継がれています。


人権作文や標語だけじゃない! SDGsの視点も取り入れた新しい人権教育とは

長い歴史の中、先人の努力によって獲得した人権ですが、「平等権」「社会権」が認められた後も、女性や子どもに対する差別や部落差別など、様々な差別は見過ごされてきました。これらの差別解消のため、1965年に採択された「人種差別撤廃条約」や1979年に採択された女子差別撤廃条約、のちに「子どもの権利条約」へとつながる「児童の権利に関する宣言」(1959年採択)、さらに日本ではあらゆる差別をなくすための同和教育などがあるものの、教育や雇用といった面で今なお課題が残されています。近年ようやく女性や子どもの権利についての意識が高まり、人権の大切さが理解されるようになったことで人権教育の形も変化してきました。

人権教育といえば、人権作文やポスター、そして人権標語の宿題を思い出す人もいるかもしれません。しかし、現在行われている人権教育はそのような「定番」に加え、まず人権や人権尊重について基本的な知識を学びます。これはお互いの違いを認め合い、尊重し、協力していくことを目的としています。日常生活の中で問題があると感じた出来事に対し直感的に「これはおかしい」と思う感性や、配慮ある態度や行動に移せるよう、多彩な教材を活用し、体験を通して学んでいくのです。
たとえば小中学生が保育園や幼稚園の園児と交流したり、老人施設でデイケアサービスを体験したり、さらには障がい者施設での仕事見学や盲導犬との交流、外国人を学校行事に招待するなど、さまざまな交流体験が行われています。こうした人権教育は学校以外にも、多くの企業などでも行われています。

また、SDGsを意識した人権教育も最近の特徴です。SDGsに盛り込まれている女性の権利やダイバーシティ教育、環境保護の大切さなどを学ぶことで、子どもたちは多様性を学び、自分とは異なる環境・異なる考え方を持つ人を大切にする心を育てることができます。これは同時に、SDGsの目標を達成することにも繋がっていくのです。

こうした教育は1つの学校や企業の中だけで行えるものではなく、保護者や家族、地域関係者等との連携がなければ実現しません。目の前の人権課題に気づき向き合うために、今後も学校づくりやまちづくり、社会づくりのなかで人権啓発や人権教育が推進されることが重要となるでしょう。



まとめ

人権は多くの時間と努力によって獲得され、守られてきました。現在、私たちは日常で意識することなく、これらの恩恵を受けて生きています。これまで築かれた人権を守り、さらなる新しい形の人権教育が実践されることで、すべての人の人権が保障された、誰もが自分の幸福を追求できる社会の実現を期待したいものです。

[参考]
国連広報センター:
https://www.unic.or.jp/files/e530aa2b8e54dca3f48fd84004cf8297.pdf

文部科学省:
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinken/siryo/index.htm
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/024/report/attach/1370713.htm

国連人権高等弁務官事務所:
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Issues/MDGs/Post2015/SDG_HR_Table.pdf

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