COPの歴史と地球サミット 未来に生きる子どもたちへ豊かな環境を残すために

地球環境の悪化を食い止め、持続可能な社会を実現するために、いくつもの国際会議が約50年前から開催されてきました。とりわけ大きな転機となったのが、1992年に開催された「地球サミット」です。UNFCCC(国連気候変動枠組条約)やCOPが生まれた「地球サミット」とは、その後の私たちの生活にどのような影響を与えたのでしょうか?
地球サミットから始まった取り組みと当時注目を集めた「伝説のスピーチ」から、私たちが学べることを考えます。

気候変動に関する『COP』とは? 注目される背景と開催の歴史

COPとは、Conference of the Partiesの略で、日本語では「締約国会議」と訳されます。何かしらの条約を締結した国同士の国際会議がCOPなのですが、最近ではCOPといえば、「UNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change:国連気候変動枠組条約)」の締結国による会議を指すことが多くなっています。

昨年、国連事務総長が、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が訪れた」と述べ、「沸騰化」というインパクトのある言葉が世界を駆け巡りました。実際、2023年の夏は観測史上、一番暑い夏になりました。そしてその原因は、人間活動、特に二酸化炭素など温室効果ガスの排出だとされています。

UNFCCCの目的はこの温室効果ガス濃度の安定化です。UNFCCCは1992年5月の国連総会で採択され、同年翌月の地球サミットで150カ国以上が署名し、1994年3月に発効しました。発効以来、毎年開催されているCOPには、各国の政府関係者や学者、NGO団体などが参加し、情報交換や議論が行われています。

UNFCCCの締結国にはそれぞれ温暖化対策が義務付けられていますが、COPでは各国の対策がどれほど進んでいるかの報告や確認も行われています。世界中が協力しなければならないこの課題をクリアするために、UNFCCCとCOPは大きな役割を担っているのです。

UNFCCCもCOPも地球サミットから―地球サミットの意義と成果

UNFCCCが署名された1992年のUNCED(The United Nations Conference on Environment and Development:環境と開発に関する国連会議)」である「地球サミット」は、まさに名前の通り「地球的な」会議でした。地球サミットはブラジルのリオデジャネイロで12日間にわたって開催され、世界中のほとんどの国、180カ国が参加、出席者は数万人にのぼったといわれています。

地球サミットでは5つの宣言と条約が取り上げられましたが、そのひとつが前述のUNFCCCです。ちなみに他の4つは「生物多様性条約」「アジェンダ21(環境保護行動計画)」「環境と開発に関するリオ宣言」「森林に関する原則声明」で、いずれも自然環境の保全と持続可能な開発を目指すものです。

この地球サミットが開催される20年前の1972年、「かけがえのない地球」というスローガンを掲げて環境問題を初めて国際会議の場で話し合うためにスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」がありましたが、それから20年かけて環境は悪化の一途をたどってしまいました。

これによって世界の危機意識が高まり、持続可能な社会の実現に向け、本格的に取り組みを始めようと国連人間環境会議20周年を記念して開催されたのが地球サミットでした。

地球サミットはUNFCCCやCOPの出発点であり、「持続可能性」という概念を普及させるきっかけとなった重要な会議だったのです。




地球サミットで注目! 12歳少女の「伝説のスピーチ」から学べること

地球サミットでは多くの演説が行われましたが、なかでも1人の少女が行ったスピーチは、「世界を5分間沈黙させた伝説のスピーチ」と呼ばれ、大きな注目を集めました。

このスピーチを行ったのは当時12歳だったセヴァン・カリス=スズキさんです。
セヴァンさんは友人と作った「子ども環境協会」代表としてステージに立ち、「何もかも持っている私たちは、なぜこんなに欲深いのでしょう」と問いかけます。さらに、「直し方のわからないものを壊すのは、もうやめてください」と訴えました。

確かに自然環境は壊すのはあっという間ですが、元に直すことは難しく、できたとしても長い時間がかかるものです。そして私たちが持っているものの中には、環境のことを考えると手放してもよいもの、手放したほうがよいものがたくさんあるかもしれません。
12歳の少女の言葉は、今でも多くのことを私たちに問いかけています。このスピーチは「国連広報センター」YouTubeチャンネルで日本語字幕付きで見ることができます。

セヴァンさんのスピーチから30年、世界中の国や企業、ボランティアなどが協力し、活動に取り組んでいますが、残念ながらその後も地球環境問題は悪化の一途を辿っています。世界の気温は上がり続け、それにより影響を受ける絶滅危惧種の数はこの20年で250倍以上増加しました。増え続けるプラスチックごみはマイクロプラスチックとなり海洋ごみとして海の生態系に影響を与えるだけでなく、大気中にも浮遊して大気汚染を悪化させています。これらはさらに有害な化学物質を吸着し、呼吸から人体へも取り込まれ、肺や便、母乳などからも検出されています。

大人になり、環境活動家として活躍するセヴァンさんが今強調するのは、条約や協定があっても実際に行動するのは自分であるという点です。自分にできることをまずはひとつでも始めてみる、そうすることで私たちも誰かのロールモデルになり、別の誰かの行動に影響を与え、ひいては環境問題の改善に繋がるかもしれません。



まとめ

地球サミットから出発したUNFCCCやCOPは、世界の気候変動対策に重要な役割を果たしています。
しかしどんなにすばらしい条約や法律があっても、目標を実現するには一人ひとりの行動が重要です。
私たちは今、地球という大きな家族のメンバーとして、未来に生きる子どもたちのためにできることはないか、見直すことを求められています。


[参考]
環境省:
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h07/9836.html
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h05/9368.html
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/feature-01.html

経済産業省:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/what_is_cop.html

外務省:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page22_003283.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/wssd/wssd.html

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