COPとは? 気候変動や温室効果ガスについて協議する国際会議の歴史とこれから

世界中で気候変動による大きな影響が現れています。地球温暖化を防ぐために、毎年COPと呼ばれる会議が開催され、世界全体で対策に取り組んでいます。そこではどんなことが議論され、どのような成果を上げてきたのでしょうか?
今回はCOPについて説明するとともに、気候変動の現状を紹介します。
また、温室効果ガス削減に向けた参加国の取り組みと、私たち個人が行える対策を考えます。

気候変動問題を考える―毎年開かれるCOPとは

COP(Conference of the Parties)とは、『条約を結んだ国々(締約国)が行う会議』の略称です。様々な条約ごとにCOPが開催されますが、私たちがよく耳にするCOPは、主に1992年に採択された「UNFCCC(国連気候変動枠組条約)」加盟国が、毎年開催する国際会議のことです。

この会議の究極的な目標とは大気中の温室効果ガス濃度を安定させることで、そのために197の国と地域から政府関係者はもちろん、産業界や環境保護団体の代表が集まって議論を行っています。

COPは1995年以来、コロナ禍で中止になった2020年を除いて毎年開催されていますが、なかでも大きな節目になったCOPがあります。

そのひとつが1997年に開催されたCOP3(京都会議)で、このときに採択された京都議定書に2020年までの温室効果ガス削減目標が定められました。

さらに2020年以降の枠組みを決めたのが、2015年のCOP21(パリ会議)で採択されたパリ協定です。
産業革命後の世界の平均気温の上昇を2℃以下、できれば1.5℃に抑えることを目標とし、今世紀後半には実質ゼロとすることが盛り込まれました。
その後、2021年に行われたCOP26(グラスゴー会議)では、COP21で掲げられた1.5℃の『努力目標』から、『各国が目指す世界目標』へと位置づけされました。

最新のCOP27は2022年10月にシャルム・エル・シェイクで開催され、この会議の主な成果として「損失と損害(ロス&ダメージ)基金」の創立が合意されました。
これまで、CO2をほとんど排出していない開発途上国が、インフラ整備が十分ではないために気候変動による水害や干ばつなどの負の影響を受けてきたことが問題となっていました。
そこで、「CO2を排出し続けてきた先進国はより重い責任を負うべき」として、開発途上国の損失と被害を支援するための基金設置を決定したのです。

気候変動対策と一言でいっても、それぞれの国の事情によって行えることは異なります。そのためCOPでは加盟国をいくつかのグループに分け、異なる義務や目標を設定しています。

今や待ったなし! 「気候変動」の現状

気候変動の問題は、なぜ、毎年世界中の国が集まって議論しなくてはいけないほどの重要課題なのでしょうか?
1℃や2℃の気温上昇と聞くと、そう大したことではないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、1℃どころか0.5℃の平均気温上昇でも地球には大きな影響があるのです。

環境省によると、地球温暖化に伴い猛暑日や豪雨の発生頻度は増加すると予測されています。実際に、近年、世界中でかつてない猛暑や大雨、スーパー台風の被害が相次いでいます。北極の氷が解けることで生態系に大きなダメージが報告されており、小麦の収量が減少し、農作物を育てにくい地域が増えるなどの食糧問題も引き起こされています。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、18世紀半ばの産業革命以降の約200年の間で世界気温が約1℃上昇したそうです。この気温上昇にはいくつかの原因が考えられますが、やはり産業革命など、人間が活動したことによって引き起こされたCO2などの温室効果ガス排出量の増加が大きく関係していると考えられています。環境省による下記のグラフを見ると分かりますが、気温の上昇とCO2排出量には明らかな相関関係がみられます。

COPとは

(出典:環境省「新たな成長のための環境行政」)

今のペースで温暖化が進むと、今生まれた子どもが大人になる2050年頃には日本の真夏日は年間50日以上になるといわれています。京都の紅葉の見ごろはクリスマス辺りになり、西日本の米の収穫量は減少し、ライチョウやサンゴが絶滅するとも予想されています。

また、その50年後の2100年頃には産業革命前に比べて世界の平均気温は、最悪の場合で6〜7度上昇し、1年の3割近くが真夏日になり、平均海面水位は最大で約1m82cm上昇するという恐ろしい予測もあります。

以上のことから、気候変動問題は今すぐ取り掛からなければならない非常に重要なテーマなのです。

温室効果ガス削減に向けた締約国の取り組みとこれから

温室効果ガス削減に向け、締約国はそれぞれの目標を掲げています。
日本は、2050年までに完全なカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにして実質ゼロにすること)を実現することを宣言しています。
その整合的な目標として、2030年度までに、2013年度比で46%の削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていくことを表明しました。

その実現に向け、再生可能エネルギーの導入や火力発電の高効率化、次世代自動車の開発、また個人家庭での省エネ化など、具体的な数値目標と対策方法が打ち出されました。

この面で特に進んでいるのは、北欧やヨーロッパの国々です。
デンマークには100%再生エネルギーの村があり、ドイツには再生可能エネルギーだけを提供している電力会社がいくつもあります。
EUは、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を2035年以降ほぼ停止することを決定しました。

もちろん国によって政治や環境、経済事情は大きく異なります。
日本のような製造業が盛んな国にとって、温室効果ガス排出削減はよりハードルが高く、途上国の中には経済発展との両立が難しい国もあります。
だからこそ国同士の話し合いが不可欠であり、COPでの議論が必要とされているのです。

ここまで、各国での取り組みを紹介してきましたが、私たちにもできる気候変動対策もあります。例えば、日本が推奨している「COOL CHOICE」です。
家電や車の買い替え時に省エネや低燃費の商品を選択したり、部屋の温度設定を見直すなど、一人ひとりが持続可能な社会のために地球にやさしい賢い選択(COOL CHOICE)ができるようになれば、1.5℃目標の達成にもつながっていきます。

まとめ

気候変動はグローバルな問題であり、各国の事情や利害が絡む複雑なテーマです。同時に、世界にとって今もっとも重要な課題のひとつであり、すでに状況は瀬戸際まできています。
国の対策だけでなく、私たち一人ひとりがこの問題を自分事としてとらえ、今できることを行うことが求められています。

[参考]
国土交通省:
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WGI_SPM_JP.pdf

経済産業省:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cop26_01.html

環境省:
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/pdf/1_1.pdf
https://www.env.go.jp/content/900473374.pdf
https://ondankataisaku.env.go.jp/cn_lifestyle/

外務省:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kiko/index.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page23_001646.html

国連広報センター:
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/climate_change_un/what_is_climate_change/
https://www.unic.or.jp/news_press/info/44283/

JETRO 日本貿易振興機構:
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2022/1003/0b368a15bcecec0b.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/11/12a4d8b504c45eb7.html

国立環境研究所:
https://cger.nies.go.jp/cgernews/202111/372001.html

一般財団法人 家電製品協会:
https://shouene-kaden2.net/learn/approach_world/

おすすめ記事