SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は、「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを目的としたものです。
いま地球ではどんな気候変動が起こっていて、その原因や影響はどのようなものなのでしょうか?
持続可能な未来のために必要な対策について知ることから、この目標の意味を考えていきます。
気候変動と地球温暖化の関係は?
地球上で起こっている気候変動とその影響について、データとともに見ていきましょう。
■数字で見る気候変動
SDGsでの気候変動とは、地球本来の自然な変動ではなく人間の活動によってもたらされたものを指しています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(2021)によれば、陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、産業革命前後から2010年〜2019年までの人為的な世界平均気温上昇は0.8℃〜1.3℃の可能性があり、最良推定値として1.07℃の上昇と報告しています。本報告書では、初めて「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言する形で明記されました。
また、有効な温暖化対策をとらず、CO2排出が今世紀半ばまで現在の水準で推移する場合、2041〜2060年の間に2℃、その後2081〜2100年の間に2.7℃、気温が上昇するとの予測がされています。また世界平均海面水位は、1901〜2018年の間に約20cm上昇し、1900 年以降、過去3千年間のどの百年よりも急速に上昇していると警告。世界の平均海面水位が、今世紀の間上昇し続けることはほぼ確実とみられています。
気候変動の影響による災害も増え続けています。
国連の調査報告書によると、洪水や台風、おおハリケーン、サイクロンが特に増えており、1995年〜2015年に起きた気候関連の災害のうち47%が洪水によるものでした。また、台風などの嵐は人命に関わる危険が高く、災害で亡くなる人の多くを占めています。
さらに、先進国を対象とした調査では、気候関連の災害で亡くなる人の76%が熱波や寒波といった異常気温によるものであると報告されています。
■温室効果ガスの増加と地球温暖化が環境に及ぼす影響
こうした気候変動の最大の原因となっているのが、大気中のCO2の増加による地球温暖化です。
石油や石炭などの化石燃料をエネルギー源とした結果、大気中に放出されたCO2の世界平均濃度は、2021年度は415.7ppm(前年度より2.5ppm増加)で、工業化(1750年)以前の平均的な値とされる278.3ppmと比べて、49%増加しています。
このCO2をはじめとする温室効果ガスの濃度が上がると地上の温度が上がるため、地球温暖化が進んでしまうのです。
その影響は、洪水や台風だけでなく、氷河の融解や干ばつ、陸や海の生態系の変化、農作物の生育など、さまざまな現象となって表れています。
このように、多くの人にとって多大な影響を及ぼす地球温暖化は、SDGsにおける中核課題として認識されています。
また、地球温暖化は海水の温度上昇にも深刻な影響を与えています。詳しくはこちらをご参照ください。
2つの気候変動対策「緩和」と「適応」
それでは、この気候変動への対策をどのように取り組めばよいのでしょうか?
対策には温室効果ガスを抑制する「緩和」と、気候変動の悪影響を軽減させる「適応」の2つがあります。
「緩和」とは、温室効果ガスの排出を抑制・削減するための取り組みです。
一方、「適応」は気候変動の悪影響を軽減させるために自然や社会のシステムを調整する取り組みです。また、気候変動には気温が上がることでこれまで作物を栽培できなかった場所で農業ができるようになるなどのよい影響をもたらす面もあるため、好影響を活かすことも含まれています。
最も重要な対策は「緩和」なのですが、その効果が十分発揮されるまでには長い年月がかかるため、「適応」を同時に進めることが不可欠です。
数値目標としては、国連が2015年のパリ協定で、「世界共通の長期目標として地球の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求すること」を定めました。2021年の気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、1.5℃を事実上の目標とする決意が示され、現在は1.5℃目標が世界的な主流になっています。
気候変動対策の例
次に、実際に行われている対策の例を見ていきましょう。
■緩和策の例
緩和策は、エネルギー戦略とCO2の吸収が中心となります。
エネルギー戦略では、太陽光・風力・水力・バイオマスなど再生可能エネルギーの活用やエコドライブ、省エネ建築、節電の推進などによる温室効果ガスの排出削減が挙げられます。
CO2の吸収に関しては、都市の緑化や森林を増やすなどの対策により、吸収量を確保していくことを目指しています。
日本では2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度の水準から46% 削減することを目標に設定しています。
<取り組み事例>
世界展開しているコーヒーチェーン各社では、それぞれCO2削減に向けた取り組みを始めています。
ストローやテイクアウト用のレジ袋をバイオマスプラスチックや紙製に変更するなど、環境負荷に配慮した資材に順次切り替えています。
また、肥料や農薬を適正に使用したカーボンニュートラルな生豆の生産や、加工過程で使用する水の量を50%削減する目標を立て、生産段階からCO2排出量の削減にも取り組んでいます。
ほかにも、気候変動に耐性のある品種の配布や、森林の保全や復元プログラムへの投資やサポートの展開など、独自の取り組みを進める企業も出てきています。
CO2を回収するイノベーションは世界で進んでおり、今後の発展が期待できます。また、緩和策の代表的な例である代替エネルギーの事例についてはこちらでも解説しています。
■適応策の例
緩和策が気温の上昇やCO2の削減など数値目標を掲げているのに対し、適応策は世界共通の目標を立てにくい面があります。国や地域によって条件が異なるため、それぞれが独自の対策を設定しているのです。
日本では2018年に「気候変動適応法」を制定し、各地域の自然や社会経済の状況に合わせた適応策を実施することとしています。
具体的には、災害への備えや気候に適応した農作物の開発・技術の導入、熱中症対策などへの取り組みが挙げられます。
<取り組み事例>
・水害のリスクを見える化した「地先の安全度マップ」の作成(滋賀県)
滋賀県では、県の流域内の各地点の安全度を示した「地先の安全度マップ」を作成し、2012年から公表しています。これは地域住民と水害リスク情報を共有し、水害に備えるためのものです。
住民各自が自宅などのリスクを確認し、避難ルートや避難場所、避難のタイミングなどを把握するといった活用や、安全な土地利用や住まい方を考えるための指針として役立ててもらうことなどを目的とし、随時更新されています。
・県民参加型啓発活動「かながわ暑さ調べ」(神奈川県気候変動適応センター)
神奈川県気候変動適応センターでは、2022年度に県民参加による8月の“暑さ指数”の県内一斉調査「かながわ暑さ調べ」を実施しました。
これは、暑さ指数計を用いて一斉測定日時に屋外の暑さ指数(気温、湿度、日射・輻射熱)を測定する試みです。県民の参加者を募り、県内各地の暑さ指数を集計して、県内の暑さマップを作成するなど、地域の熱中症対策に役立てる取り組みです。
地球温暖化の影響に対して適応力が問われている事例として、以下の記事もご一読ください。
まとめ
SDGs13は地球上で生活する全ての人にとって、極めて重要な目標です。地球温暖化に対して直結する要因を緩和し、同時に地球温暖化によって起こる災害などに適応する力も必要になってくることがお分かりいただけたでしょうか。
私たち一人ひとりの行動が、地球の未来につながっていることを意識し、できることから取り組んでいきましょう。
[参考]
気象庁:
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WGI_SPM_JP.pdf
https://www.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
環境省:
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/ondanka/
公益財団法人日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/13-climate_action/
気候変動適応情報プラットフォーム:
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/index.html
資源エネルギー庁:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html
国立研究開発法人 国立環境研究所:
https://www.nies.go.jp/kanko/news/38/38-3/38-3-02.html
神奈川県:
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ap4/cnt/f536377/index.html
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/b4f/tekiou/atsusashirabe.html
滋賀県:
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/kasenkoan/19581.html
国際連合広報センター:
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/climate_change_un/actnow/
https://www.unic.or.jp/news_press/info/44283/