SDGs15 陸の豊かさも守ろう 生物多様性を脅かすものとは

地球には3,000万種もの生き物がいて、互いに命を支えあっています。
ところがいま、空前のスピードで生き物とその生活環境が破壊されつつあります。
地球が本来持っているこの素晴らしい多様な生態系を、われわれはどのようにすれば取り戻すことができるのでしょうか?
危機に瀕している陸の生物多様性の現状と、持続可能な社会を目指すSDGsゴール15の取り組みについてご紹介します。

SDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」とは?

SDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」は、陸に暮らす生き物と、その生き物が暮らす環境を守ることを目指し、生態系を守るための森林の回復や、砂漠化の防止対策や山地の生態系の能力の強化など12のターゲットを設定しています。
ほかにも絶滅危惧種を守る活動として密猟や生き物の違法取引の撲滅や、外来種の侵入を防ぐ対策をすすめています。
これらの問題には貧困という問題が大きく関わっているため、開発途上国へのサポートや国際的な支援を強化することなども同時に掲げられています。

私たちの暮らす地球は、本来は多様性にあふれたとても豊かな場所です。この多様性には、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性の3つがありますが、地球では3,000万種もの多様な生き物が、森林、湿地、山、川など多様な生態系で暮らしています。

さらにそれぞれの種は、遺伝子の多様性を持っています。
例えばリンゴという1つの種に、どれほど多くの品種があるかご存じでしょうか? リンゴがお好きな方であれば、サンふじやジョナゴールド、王林などいくつか思い浮かぶかもしれませんが、実は日本だけでも約2,000種、世界では約15,000種もの品種があるのです。
もちろんこれはリンゴに限ったことではなく、あらゆる生物の種は非常に豊かな遺伝子の多様性を持っているのです。

生物多様性を取り戻すために。SDGs15がいま必要な理由

ところが、この生物多様性は空前の勢いで失われています。
例えば地球の陸地の3分の1を占め、生物の8割の種が生息している森林ですが、違法伐採や焼き畑農業、火災、開墾などによって急速に消失しつつあります。そのスピードは1日で東京ドームの半分、1週間で東京都の面積分、1年で韓国の面積分の森が消えるほどの勢いです。

森林は多くの生物にとって重要な生息場所であるのと同時に、食物連鎖の重要な要素でもあります。森に生息するさまざまな植物を昆虫や小動物が餌とし、それらの小動物がまた、大型の捕食者や鳥類などの天敵の餌となります。森林が減少すると、食物連鎖が崩れ、生物の個体数や種の相互作用に影響が出ます。

現在、生物の27%以上が絶滅の危機にあるとみられており、毎日100以上の種が絶滅し続けています。これは13分に1つの種が消えている計算です。

前述の食物連鎖の例のように、生態系は複雑に関わりあっているため、1つの種の消失は他の種にも大きな影響を及ぼします。絶滅が危惧されている種のひとつ、ミツバチについて考えてみましょう。実は、世界の食料の6割以上がミツバチを介して受粉しています。そのため、もしミツバチが絶滅したら多くの植物が消えるとされ、私たちの食卓からリンゴやコーヒー、キュウリなどがなくなる可能性もあるのです。
アインシュタインは「ミツバチが絶滅したら、4年後には人類も滅びる」といいましたが、種の消失は私たち全員にとって喫緊の課題であり、とても重要な問題なのです。

陸の豊かさを守るための世界と日本の取り組み

この問題に向き合い、ゴール15を達成するため、世界中で様々な取り組みが始まっています。「COP-CBD (生物多様性条約締結国による国際会議)」や、その条約に基づいた2030年までに陸海域の30%以上を保全しようという「30by30」もそのひとつです。

陸の生き物を守るために、各業界の企業も率先して取り組んでいます。
例えば、多くの木を使用する住宅メーカーの中には戸建て、住宅を建てる時に地域に配慮した植樹をおこなったり、自社が森林を保有し、持続可能な森林となるよう管理している企業があります。ほかにも、ある食品メーカーは衛星モニタリングを活用して違法伐採を監視したり、大規模な植樹活動をしています。

一方、私たち消費者は、陸の豊かさを守るために何ができるでしょうか?
例えば商品を購入するときに、認証マークをもとに、その商品がどこから・どのようなルートで来ているかを確認し、選択することができます。おもちゃや家具などの木製品を購入するときには、持続可能な森林管理の証である「FSC認証」が目安になるかもしれません。
そのほか、私たちがすぐに取り組めるアクションとして、森林を資源としている紙や紙製品を「安易に使い捨てせず再利用する」「リサイクルに出す」「再生紙を購入する」「ペーパーレスを目指す」といった小さな取り組みも、森林を守り、ひいては生態系を守ることにもつながっていきます。


まとめ

森林消失や砂漠化といった問題は、日本に住んでいると身近な問題とは捉えにくいかもしれませんが、私たち人間も他の生物と影響しあって生きている豊かな生態系の一部なのです。
この意識を持つことが、陸の豊かさを守る第一歩につながるかもしれません。

[参考]
環境省:
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/treaty/convention.html
https://www.env.go.jp/council/06earth/y060-101/ref01_3-2.pdf

農林水産省:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_15.html

林野庁:
https://www.rinya.maff.go.jp/j/suigen/suigen/con_1.html

国立研究開発法人 科学技術振興機構:
https://scienceportal.jst.go.jp/explore/review/20221118_e01/

公益財団法人 日本ユニセフ協会:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/15-land/

相模原市:
https://sdgs.city.sagamihara.kanagawa.jp/sdgs-17goal/15_life-on-land/
https://sdgs.city.sagamihara.kanagawa.jp/thinned-wood/

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