貿易の世界では、長らく開発途上国が生み出す製品を先進国が安価で買い入れることが続いていたため、それが開発途上国で働く人たちの低い賃金と劣悪な労働環境を生み出していました。
しかし近年では、この不平等をなくす貿易「フェアトレード」が世界で行われるようになっています。本コラムでは、SDGsにも広く関わってくるフェアトレードの意義や課題、成果などを解説していきます。
フェアトレードとは?
日本語に訳すと「公正・公平な貿易」という意味を持つフェアトレード。フェアなトレードというと当たり前のことに聞こえるかもしれません。しかし、主に先進国と開発途上国の間において、長らくフェアでないトレードも行われてきました。
そもそも貿易とは、片方の国が利益を得て、片方の国が利益を損なうものではないはずです。しかし、先進国と開発途上国の間ではそのような貿易が行われてきたのです。
たとえば、ある先進国Aが自動車など、その国でないとできない技術力の高い工業製品を生産し、ある開発途上国Bで生産されるのがサトウキビやバナナなど、多くの国で収穫される農業産品だけだったとします。
先進国Aの製品は、その国の技術でしか製造できないものですから、他と価格の比較がされることなく輸出されます。一方、開発途上国Bの農産物は他国でも収穫されているため、比較され、安く買いたたかれてしまいます。
そうなると、開発途上国Bで生産される農業産品の価格コントロールは先進国Aに握られ、不当に安く先進国Aへと輸出されるようになります。開発途上国Bで農業生産などに携わる労働者は不安定で低い賃金で働くことになります。労働環境を整えるための資金を捻出できないため、労働環境は劣悪になり、人件費を抑えるために子どもを働かせるような状態が当たり前になります。 その結果、先進国Aはいつまで経っても豊かで、開発途上国Bはいつまで経っても貧しい状態が続いてきたのです。
そこで、この不平等をなくし、労働や生産されるものに見合った正当な価格で、正当な取引を継続していこうという動きがフェアトレードなのです。
フェアトレードの歴史とSDGsとの関係
フェアでないトレードの源流は16〜17世紀の植民地時代に遡ります。ヨーロッパの列強諸国がアジアやアフリカ、南米などを征服し植民地にしていきました。彼らは現地住民や奴隷を安価な労働力として使い、綿花など市場価値の高い作物を農園で大量生産して先進国へと輸出し、莫大な利益を得るようになりました。
それは第二次世界大戦以降、アジアやアフリカ、南米などの諸国が独立しても続いていました。このような国々は経済力が弱いままだったので、植民地支配時代と同じように市場価値の高い作物を、経済力が高い先進国へと安価で輸出を続けていたのです。
フェアトレードは、1946年にアメリカのNGOがプエルトリコの女性が作った手工芸品を本国で販売したのが始まりだといわれています。
1960年代にはヨーロッパでも手工芸品や砂糖などの販売を通じたフェアトレードが広まっています。当初は手工芸品が中心でしたが、紅茶やコーヒー豆などの農業産品へと広がっていき、最近ではファッション雑貨なども増えてきています。
このフェアトレードはSDGsの目標達成にも広く関わってきます。フェアトレードが広がることで労働者の賃金が上がれば、目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」、目標8「働きがいも経済成長も」の達成につながります。賃金が上がり労働環境が改善され、児童労働もなくなれば、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」につながります。そして、性別に関係なく、仕事に対してフェアに支払いが行われることで、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」にも貢献します。
フェアトレードの基準は?
フェアトレードで輸入された産品には、国際フェアトレード基準が設けられた認証ラベルが付けられています。
もっとも大きな国際フェアトレード基準は、1989年に誕生したフェアトレード団体WFTO(World Fair Trade Organization)のフェアトレードラベルです。
https://wfto.com/
また、1977年にオランダで設立されたFLO(Fairtrade Labelling Organizations International)のフェアトレードラベルも世界的に広がっています。日本でも、NPOのフェアトレード ジャパン(特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン)がFLOの一員として活動しています。
https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/intl_license.php
そのほか、各国の企業やNGO、NPOなどがそれぞれ独自の基準でフェアトレードを評価し、ラベル表示している産品もあります。世界共通のフェアトレードの原則がWFTOによって国際フェアトレード基準として定められていますので、その基準に準拠されていれば、フェアトレード商品だと名乗ることができます。
国際フェアトレード基準や対象となる取扱品目についてはフェアトレードジャパンのWebサイトで公表されています。
https://www.fairtrade-jp.org/
フェアトレードの課題
フェアトレードにも課題があります。フェアトレード産品は丁寧に作られて大量生産をしていません。貿易の際にも最低価格を決め取引をしていますので、これまでの価格に比べると、どうしても販売価格が高くなりがちです。フェアトレード認証のラベルを貼るための手数料がかかることも一因となっています。
適正な価格で販売されているのですが、消費者はどうしても安価な商品のほうを手に取りがちですので、購入に対する意識を変えていく必要があります。
まとめ
フェアトレード産品はこれまでの輸入品と比べ、仕入れコストが高くなりがちです。そのため、短期的には利益が減るかもしれません。しかし、フェアトレードに取り組んでいくことは、持続可能なビジネスモデルへとつながっていきます。長期的な視野を持って考えていくことが重要だといえるでしょう。
[参考]
https://www.shaplaneer.org/youcan/fairtrade/whatis/
https://www.cuc.ac.jp/om_miraitimes/column/u0h4tu0000002cxc.html
https://sdgs.kodansha.co.jp/news/knowledge/38329/