ダイバーシティを実現! 自動翻訳やHRテックなど加速するテクノロジー

2023.3.30

世界的にダイバーシティ&インクルージョンが進められており、現在ではすべての企業に、自社の多様性を見直す対応が求められています。
ダイバーシティ推進は企業にとって多くのメリットをもたらす一方、その環境づくりにはクリアすべきハードルがあることも事実です。
今回は企業のダイバーシティ実現に役立つテクノロジーを紹介し、社員一人ひとりの意識の持ち方についても考えていきます。

ダイバーシティ推進が企業にもたらす多くのメリットとは

ダイバーシティという概念は、1960年代にアメリカでの人種差別や女性差別に反対する声が高まったことから生まれました。 日本では20年ほど前から浸透し始め、特にビジネスにおいては性別や国籍、年齢など、多様な属性を持つ人を雇用し、それぞれの能力を生かす取り組みとして使われています。 お互いの違いを認め合い、尊重しあう状態を指すインクルージョンとセットにして、ダイバーシティ&インクルージョン、略してD&Iと呼ばれることもあります。

企業がダイバーシティを推進することには、多くのメリットがあります。 まず、多様な人材を採用することで、これまで見過ごしていた優れた人材を発掘することができます。多様な人材を採用することは、すなわち多様な背景や視点を持つ人材を得ることができるため、革新的で創造的なアイデアが生まれる可能性が高まります。同時に、見過ごしていた優れた人材を発掘する機会にもなります。

多様な人材が働きやすい環境を作るために、働き方の見直しも進むことが期待されます。マイノリティが働きやすい職場は、マジョリティにとっても働きやすい職場となります。従業員の満足度が向上すれば、生産性が上がり、企業の業績向上にもつながります。

また、近年D&Iはますます重要視されるようになっており、この動向から、積極的にD&Iを推進する企業は、就活生から好印象を受けることも期待できます。

ダイバーシティの環境づくりに役立つテクノロジー

ダイバーシティの推進には多くのメリットがありますが、多様な人材がスムーズに働くためにクリアすべき問題もあります。

たとえば、外国人雇用にあたっての手続きの煩雑さやコミュニケーションの問題、障がいのある人や高齢者を雇用する場合には、職場のバリアフリー化や適切な仕事の割り振りなど、仕事ができる環境を整える必要があります。また、女性を雇用する場合には妊娠・出産で長期の休みが必要になる可能性もあります。
しかしそういった問題を、HRテックが解決しようとしています。

HRテックとは、Human ResourcesとTechnologyを掛け合わせた略語で、ビッグデータ解析、IoT、AIなどのテクノロジーを活用して人的資源管理を公正かつ効率的に行うシステムです。

外国人雇用に特化したHRテックを利用することで、マッチングから書類手続きまでをスムーズに一括して行うことができます。自動翻訳や音声認識技術を導入すれば、コミュニケーション問題も解決できます。

身体的な障害に対応するため、点字で表示できるスマートウォッチや、カメラでとらえた人の顔や周囲の状況を音声で伝えてくれる技術なども開発されています。
さらに、周囲の会話をリアルタイムでテキスト変換する技術や、思い浮かべた言葉を音声化するシステムの研究も進んでいます。こうした技術が実用化されることで、より広い範囲で雇用の機会が提供される可能性があります。実際、アメリカのアドバイザリー企業は、「2023年までにテクノロジーによって障害者雇用の機会が3倍に増加する」と予想しています。

コロナ禍で導入が進んだテレワークやビデオ会議は、出社が困難な社員にも有用なシステムです。会議もビデオ会議システムで行い、出席できない社員は録画を見ることで会議の内容を把握することもできます。

E-ラーニングを使えば、休職中に自己学習することもできます。また、遠隔操作できるロボットを使ってカフェでの接客が行える「分身ロボット」なども登場しており、寝たきりの人でも接客の仕事を行うことができます。テクノロジーは人をサポートするだけでなく、肉体的な機能を拡張し向上させるものに進化しているのです。

また、多様な人々が存在すれば、お互いの違いに起因するトラブルやハラスメントの可能性も高くなるという現実があります。こういった問題の解決に有用なテクノロジーも開発されています。

例えば、高齢者や障がいを持つ人の気持ちを理解するために、身体的不自由さを体験できるVR技術があります。また、社員のプライバシーを保護するために、人事ではなくAIに問い合わせをする社内制度を導入することもできます。

このように、テクノロジーが多くの課題を解決する一方で、テクノロジーに起因する不備も存在します。システムによっては仕組みや表記がマジョリティ優先になっていることもあるので、どのようなテクノロジーを導入するか、慎重に検討することが重要です。

ダイバーシティ実現には一人ひとりの倫理観が不可欠

ダイバーシティには、表層・深層の2つのレベルがあるといわれています。
表層的ダイバーシティは年齢や性別、人種、障がいなど、目に見えるもので、深層的ダイバーシティは信条や価値観、学歴など、目には見えないものです。

ここまで紹介してきたテクノロジーは、表層的なダイバーシティの解決に寄与するものといえるでしょう。テクノロジーで解決できるのは、ダイバーシティの一部に過ぎないことを忘れずに、研修や従業員教育を繰り返し行い、経営者と社員一人ひとりの意識を変えていくことが、本質的なダイバーシティの実現につながります。

まとめ

働く人の個性や属性の違いは、経営にも社員の意識にも変化を与えます。
確かにダイバーシティ推進に向けて環境を整えるには、ある程度の時間と予算がかかります。
それでも多様な人々が一緒に働くことには、そうした「投資」を補って余りあるメリットがあるのです。

[参考]
日経ビジネス:
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/20/accenture_newfuture/vol6/

国立研究開発法人 産業技術総合研究所:
https://www.aist.go.jp/aist_j/information/diversity/index.html

日本財団ジャーナル:
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2021/65140

日本経済新聞社:
https://ps.nikkei.com/ibmportal/aging1902/

PR TIMES:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000945.000013485.html

ガートナージャパン:
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20191114

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