IoTやAIを支えるセンシング技術。少子高齢化や地球温暖化などの課題にどう役立つのか?

日本で問題となっている少子高齢化は、医療・介護・保育などの分野に対して、さまざまな課題を浮き上がらせています。生産年齢人口の減少による働き手不足も深刻です。 また、世界では環境問題も大きな問題となっており、気候変動の対策が急務です。
一方近年では、IoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence)の発展は目覚ましく、産業や社会へのインパクトが期待されています。これらの技術を支えているのがセンシング技術です。センシングにより人やモノの行動・挙動をデータ化し、分析して活用することで、様々な問題解決に寄与します。

介護現場で働き手不足が深刻化‥センシング技術の活用で負担軽減へ

高齢者人口及び割合の推移(1950年〜2040年)

出典:総務省統計局

総務省の統計によれば、日本の総人口1億2522万人(2021年9月15日現在推計)のうち65歳以上の高齢者が占める割合は29.1%である3640万人にも上っています。日本は、高齢者人口の割合が世界でもっとも高い国となっているのです。
そのため、老人ホームなどの施設に入居する高齢者も増えています。それに伴い老人ホームの数や定員数は年々増えてはいるものの、比較的安価に利用できる特別養護老人ホームは常に定員いっぱいとなっており、入居できるのは要介護度の高い高齢者が中心です。そのために入居を希望しても数年待ちになってしまうことが問題になっています。
希望すればいつでも入居できる民間老人ホームもありますが、費用的な問題が発生しますので、誰もが利用できるというわけではありません。

特別養護老人ホームになかなか入居できない理由として、介護・医療の人的リソース不足もあげられます。そこでこの人的リソース不足の解消に期待できるのが、センシング技術を活用したIoT見守りシステムです。

IoT見守りシステムでは、入居者のバイタル情報(脈拍、心拍数、血圧、体温など)や環境情報(温度・湿度・照度)をセンシングすることで、入居者の健康状態や安全性に加え、居室が快適かどうかなどを確認できるようになります。異常を検知すると、PCやスマホに通知が送られるだけでなく、カメラでの状態確認もできますので、人手不足になりがちな夜勤の時間帯でも、リアルタイムに高齢者を見守れるようになります。

保育園でのセンシング技術活用で業務効率化へ

保育園でのセンシング技術活用

少子高齢化による働き手不足は保育士にも影響を与えています。働く世帯が増え、さらに子ども・子育て支援制度が制定されたことによって、保育施設の利用は増加し続けています。しかし、保育士の労働時間の長さなど労働環境の問題により、保育士自体は常に不足している状況です。

保育園でもセンシング技術を活用することで、保育士の負担を減らすことができます。園内にカメラやセンサを設置して、子どもたちの様子を保護者が遠隔で確認できるようにしたり、登園・降園確認を自動化することで保育士のチェックの時間を短縮するなど、様々なサービスがあり、利用する保育園も増えています。最新技術を積極的に活用し、確認業務や事務処理を自動化することで、それらにかかっていた時間を子どもとのコミュニケーションの時間に充てることができます。

地球にやさしいセンシング技術

地球にやさしいセンシング技術

センシング技術は人の安心・安全を守るだけでなく、地球環境を見守り、負の影響を最小化することにも活用されています。

例えば、人工衛星による地球環境の観測にも様々な種類の観測センサが使われています。
環境省、国立環境研究所、宇宙航空研究開発機構が共同で開発した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」は地球温暖化の原因となる「温室効果ガス」の濃度分布を宇宙から観測しています。

もっと身近なところでは、センシング技術は、排気ガスの成分を測定するために自動車に搭載され活用されています。
自動車の排気ガスには温室効果ガスである二酸化炭素が含まれているほか、大気汚染を引き起こす一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)も含まれています。
これらの化学物質を多量に排出することで地球環境や人体に悪影響を及ぼすために、世界各国では排ガス規制が厳しさを増しています。

排気ガス中の酸素の濃度は燃焼状態によって変化するため、排ガス規制をクリアするためには酸素センシング技術が欠かせなくなっています。酸素に反応するセラミック製の製のセンサを活用して排気ガス中の酸素濃度をモニタリングして信号に変え、燃料噴射をコントロールすることで排ガス浄化に貢献しています。

まとめ

今回は、少子高齢化が引き起こす問題や環境問題に着目し、センシング技術がどのように活用されているか紹介しました。今後は、いま以上に多様な分野で積極的に活用されていくでしょう。

[参考]
国立研究開発法人 国立環境研究所、環境展望台:
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=86

GOSAT「いぶき」温室効果ガス観測人工衛星:
https://www.gosat.nies.go.jp/index.html

総務省統計局:
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html

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